おやぢの部屋2
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Pie Jesu/Sacred Arias
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森麻季(Sop)
金聖響/
オーケストラ・アンサンブル金沢
AVEX/AVCL-25182(hybrid SACD)



いつもお美しい森麻季さんの最新アルバムです。今回は「宗教曲」という範疇に入る曲を集めたもの、金沢の音楽堂という美しい響きのホールでの録音によるSACDというのも、聴く前から期待が高まるところです。データを良く見ると、現場での録音機材はDSDではなくハイビットのPCMのようですが、マスタリングはあの杉本さんですから、なんの遜色もない音が聴けるはずです。
1曲目、モーツァルトの「Exsultate, Jubilate」で解像度の高い、その分、ちょっと固さの残るのがはっきり分かる演奏のオーケストラの序奏に続いて聞こえてきた森さんの声は、そんな録音の特性が十分に生かされた透明そのものの響きを持っていました。極力ビブラートの抑えられた歌い方は、この時代の音楽にはとてもマッチして、モーツァルトのメッセージが過不足なく伝わってくるものです。それは、まるでオリジナル楽器であるバロック・ヴァイオリンのような澄みきった音とともに、無理にアタックを付けようとしない滑らかな肌触りの感じられるものでした。さらに、最後の「Alleluja」での煌めくようなコロラトゥーラでのテクニックにも、なんの破綻もありません。
モーツァルトの作品はもう一つ、「ハ短調ミサ」からのソプラノのためのアリアが2曲歌われています。「Gloria」の中の「Laudamus te」での超絶技巧の中に秘められた可憐さと、「Credo」の中の「Et incarnatus est」でのしっとりとした味わい、いずれも森さんの魅力が最大限に発揮されているものでした。特に後者での、木管楽器のソロとの間のアンサンブルは見事です。ソプラノには難しい低音も軽々とこなしているのも、さすがです。
ハイドンの「天地創造」からのレシタティーヴォとアリアを挟んで、後半にはバッハの登場です。「マタイ受難曲」の中の、フルートの長大なオブリガートを伴う「Aus Liebe will mein Heiland sterben」では、まずそのフルートソロを担当されている、オーケストラ・アンサンブル金沢の首席奏者、岡本えり子さんの清潔な演奏に惹かれるものがあります。「愛のために、救い主は亡くなられた」という崇高な歌詞を、森さんはしっかり噛みしめているように聞こえます。もう1曲、「ヨハネ受難曲」からの「Zerfliesse, mein Herze」も、素敵です。
そして、アルバムタイトルであるフォーレのレクイエムからの「Pie Jesu」が始まります。間奏の部分で木管が聞こえてこないので、これは第2稿で演奏しているのかと思い、もっかん聴いてみましたが、確かに管楽器は入っていないものの、ファースト・ヴィオラのパートもなくなっているという不思議な版によるものでした。これはおそらく、ソリストのメロディをなぞっているそのパートをカットして、森さんの声をよりクリアに聴かせようという配慮なのでしょう。この手のソロアルバムでは、逆に分厚いオケで飾り立てようとすることが多いはずですから、スタッフはよほどソリストの声に自信があったのでしょう。
そこまでして前面に押し出されている森さんの歌声ですが、この頃になってくるとちょっとした不快な「癖」が耳に付くようになってきます。先ほど例に挙げたバロック・ヴァイオリンのように、彼女の歌い方は音を出してしばらくしてから異様なふくらみが出てくるのです。このフォーレの場合だと3小節目からの「dona eis」の部分の八分音符が、そういう歌い方のせいでまるでそれぞれ二つの十六分音符のように聞こえてきて、なにかゴツゴツとしたみっともないものになってしまっているのです。
最後の「天使の糧」(フランク)は、逆にセンスの悪い極彩色のフル・オーケストラ・バージョンにちょっとたじろいでしまいます。これこそ、どこにでもあるライト・クラシック用のケバケバしたアレンジではありませんか。宗教曲の名曲をオリジナルの形で集めたものだとばかり思っていたら、実はその程度のものだったとは。
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by jurassic_oyaji | 2007-12-14 21:46 | 歌曲 | Comments(0)