おやぢの部屋2
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RIES/Flute Quartets
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John Herrick Littlefield(Fl)
Aaron Boyd(Vn)
Ah Ling Neu(Va)
Yari Bond(Vc)
NAXOS/8.570330



ベートーヴェンの最初期の伝記の執筆に関わったフェルディナント・リースは、「作曲家」というよりはむしろ「ベートーヴェンの弟子」というカテゴリーで語られることの方が多いのではないでしょうか。彼の父親、フランツ・リースにかつてはヴァイオリンを教わり、個人的にもなにかと面倒を見てもらったという縁があったものですから、その父親の手紙を携えてフェルディナントがやって来たときには、ベートーヴェンは快く彼をピアノの弟子として迎え入れたのでした。さらに、彼の作曲の先生であったアルブレヒツベルガーの教えを受けられるようにも手配をします。つまり、作曲に関しては、彼はベートーヴェンの「弟子」というよりは「同門」ということになります。
フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成のフルート四重奏曲作品145は、彼の晩年(とは言っても、まだ50代でした)に作られたものです。この作品番号はこの曲を出版したジムロック社によって付けられたものですが、それは現代では完全に忘れ去られていました。その楽譜のコピーを、1970年代の後半にワシントンの国会図書館で発見したのが、ここで演奏しているフルーティストのリトルフィールドでした。彼は、フルートと弦楽器で演奏するための新しいレパートリーを探すために、オランダのフルーティストで音楽学者でもあったフランツ・フェスターの作ったカタログを元に、その楽譜の現物をあちこち探し回っていたところだったのですね。彼はその楽譜を元に、アンサンブルを組んで演奏旅行を行います。それは聴衆にも、そして批評家にも好評をもって迎えられたということです。現在では、そのジムロック版のファクシミリが、フォールズ・ハウスから出版されていますから、誰でも容易に演奏できるようになっています(たしか、全3曲の版は5000円程度で買えるはず)。
確かに、このアルバムで初めて耳にした3曲のフルート四重奏曲は、とても魅力的なものでした。少なくとも、旋律の美しさという点では、ベートーヴェンをはるかに凌ぐものがあります。もしかしたら、そこにはシューベルトにも通じるほどの「歌」が秘められているかもしれません。さらに、それぞれ4つの楽章で構成されていますが、それぞれのキャラクターの対比も見事なものです。
第1番のハ長調の曲は、弦楽器だけで始まりますから、フルートが主役という感じはあまりないのですが、次第に出番が表に出てくるという仕掛けでしょうか。最初の楽章のテーマは「皇帝」とよく似ていますね。あるいはモーツァルトのオーボエ四重奏曲とか。最後の楽章には「スペイン風に」という表題まで付けられて、意表をつかれます。もっとも、そのテーマは別にスペインではなくちょっとオリエンタルなのがご愛敬。第2番はホ短調という翳りのある調性、それをふんだんに意識した音楽が、心にストレートにしみてきます。1楽章のテーマがまるでモーツァルトの39番のトリオのようにも聞こえます。第3番は、ベートーヴェンの最後の交響曲のように、2楽章にスケルツォ、3楽章にアダージョという構成です。そのスケルツォのトリオなどは、まさにシューベルトっぽいテイスト満載です。
こんな素敵な曲を世に知らしめてくれたリトルフィールドさんが、ぜひともこの曲を自分で録音して後世に残したかった気持ちは、よく分かります。しかし、残念なことに、もはや彼の技量は70年代の頃ほどのクオリティを維持することは不可能になっていました。音程やアインザッツは合わず、早いパッセージは見るも無惨なありさま、聴いていて辛くなるほどでした。第3番のフィナーレには小さなアインガンクが挿入されているのですが、それを「自作のカデンツァ」などと表記する神経にも、許しがたいものがあります。
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by jurassic_oyaji | 2008-01-11 21:17 | フルート | Comments(0)