おやぢの部屋2
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BACH/Six Concertos for the Margrave of Brandenburg
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Trever Pinnock/
European Brandenburg Ensemble
AVIE/AV 2119



普通は「ブランデンブルク協奏曲」と呼ばれているバッハが作ったさまざまな形の協奏曲のセットですが、本来はこのタイトルにあるように献呈先を明記して「ブランデンブルク辺境伯のための6つの協奏曲」と呼ぶべきなのでしょうね。もっとも、実際にこんなタイトルを見たのは初めてのことですが。
1982年にイングリッシュ・コンサートとARCHIVへ録音して以来、20年以上を経ての再録音、ピノックとしては「前とは違うんだぞ」というところを、こんなタイトルで端的に伝えたかったのでしょうか。確かに、2006年の12月にイギリスのシェフィールドにヨーロッパ各地から集まったオリジナル楽器の達人たちが、ピノックの60才の誕生日の前後に行った「ブランデンブルク」全曲のコンサートとレコーディングには、なにか特別なオーラのようのものが漂っていたようです。
しかし、そのオーラは、例えばあのアーノンクールが放つ(彼に真の意味での「オーラ」があるとすれば、ですが。彼が放てるのはせいぜい「オナラ」)であろうものとは、かなり異なった健康的なものでした。それは、参加した全てのメンバーがピノックを信頼し、逆にピノックも彼らを信頼し切ったところから生まれた、何か暖かみのようなものなのでしょう。
「第1番」のような、さまざまな種類の楽器がソロとして活躍する曲では、それは最大限に発揮されているようです。ホルンが壮大に特徴的な三連符を繰り出すあたりでは、思いっきり伸び伸びと吹くことを許されたホルン奏者の喜びのようなものまで感じることは出来ないでしょうか。それにしても、このホルンの音程の良いこと。ナチュラルホルンですから、音程によって音色が変わってしまうところを巧みに分からないようにするテクニックの賜物でしょうか。オリジナル楽器の演奏技術もすごいところまで来たものです。というか、以前取り上げた辻さんの本でのオルガンの話ではありませんが、技術という点では本当は昔の方がはるかに進んでいた面があったのかもしれません。それが、現代になってやっとそこまで追いついたのだ、と言うことはできないでしょうか。
弦楽器だけの「第3番」では、とてつもなく早いテンポ設定に驚かされます。特に、最終楽章のスピードはまさに限界に挑むほどのすさまじいものです。しかし、そんなに早くてもせわしないという感じは全くなく、爽快な軽やかさを味わうことが出来ることでしょう。この辺も、一皮むけたオリジナル楽器の境地でしょうか。真ん中の楽章の即興的なカデンツァも長すぎず、短すぎず、ツボを押さえた心憎いものです。
「第5番」では、なんといってもピノック自身のチェンバロに注目です。アンサンブルの中では他のソロ楽器、ヴァイオリンとフルートとの掛け合いを楽しむことが出来ます。特に、同じフレーズの受け渡しなどでは、チェンバロだけ異質な感じになりがちなところを、しっかり馴染ませているのはさすがです。そして、完全なソロになったときの自由な振る舞い、これこそ協奏曲の醍醐味でしょう。
「2番」と「4番」に登場するリコーダーは、「5番」でのちょっとおとなしめなトラヴェルソよりは、よっぽど存在感を主張しているものでした。当時は「フルート」といえばこの縦笛のことを指したという、そんな時代の勢いまで感じられるほどです。
そして、久しぶりに聴いた気がするヴィオラばっかりの「6番」。そう、確かにバッハにはこんな世界もありました。
最近SACDの深みのある音を知ってしまったために、この録音にはちょっと重苦しさを感じてしまいます。オリジナル楽器の繊細さが殆ど感じられない、かなり大味なもの、実はこの無神経な録音のせいで、このメンバーのメッセージを受け取るにはかなりの忍耐を必要としたことを告白しなければなりません。
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by jurassic_oyaji | 2008-01-19 21:15 | オーケストラ | Comments(0)