おやぢの部屋2
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Songs in the Birdcage
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コトリンゴ
AVEX/RZCM-45556



民放のFMラジオ局などというものは、いまやすっかりレコード会社のプロモーションだけのためのツールに成り下がってしまった感があります。そこで流される曲といえば、レコード会社が躍起になって売りまくろうとしている新曲ばかりなのですからね。
ある時、カーラジオで、そんな音楽的な完成度の著しく低い曲たちの垂れ流しの中から、ポップ・チューンにはあるまじき、作品としての主張がビンビン伝わってくる音楽が聞こえてきました。それは妙に存在感の立った曲でした。ボサノバを基調としたリズムの上には、えらくグルーヴの良いベースラインと、ジャジーなキーボードがからんでいます。そんなオケに乗って歌われるヴォーカルが、また独特の感触、殆ど語るようなその歌い回しは、なぜか懐かしさを誘います。それにまとわりつくように、まるでセオリーを無視したような、それでいて心地よいコーラスが聞こえてきます。メインヴォーカル自体も、細かくパン・ポットして、そのコーラスの中であたかも「かくれんぼ」を愉しんでいるかのようなファンタスティックな光景が広がります。声の質は全くいっしょですから、コーラスはおそらく同じ人がマルチチャンネルで歌っているのでしょう。
こんな、どこをとってみても完璧に仕上がっているだけでなく、とても暖かいテイストまで秘めた曲など、洋邦問わず久しく聴いたことがありません。曲が終わったときのMCをしっかりその辺にあったレシートにメモして、この曲、そして歌っているアーティストの正体を突き止めることにしました。
その結果、手に入れたのがこのアルバムです。半年ほど前にリリースされていた「コトリンゴ」という女性のファースト・アルバムでした。アーティスト名は「小鳥」+「りんご」でしょうか。なかなかかわいらしいですね。しかし、そんなかわいらしさとは裏腹に、彼女は実は折り紙付きの実力の持ち主でした。なんとバークリーを卒業、日本ではなくアメリカで活躍しているというのです。それを、あの坂本龍一に見いだされ、彼のプロデュースでアルバムを作ることになったというのです。もちろん、曲はすべて彼女の作ったもの、弦楽四重奏が入るものもありますが、そのアレンジも含めて、編曲もすべて彼女、コトリングス、ではなくてストリングスやギター以外の楽器は彼女自身が演奏しています。
ラジオで聴いたのは、1曲目に収録されている「hoshikuzu」という曲でした。これはかなり大規模なアレンジが施されたものですが、アルバムの中には殆ど「弾き語り」に近い、アコースティック・ピアノとヴォーカルだけ、それに薄くシンセが入っているというものも多く収められています。そのピアノが、とてもいいのですよ。何よりも音色がとても柔らか、タッチがよっぽどソフトなのでしょう、その音を聴いているだけでなにか安心した気持ちにさせられてしまいます。
そして、彼女のヴォーカル。最初に聴いたときに感じた懐かしさは、他の曲を聴いて納得できました。声の感じといい、歌い方といい、そしてさらには音楽の組み立て方までもが、かつての矢野顕子を彷彿とさせるものだったのです。いや、これはまさに矢野顕子その人、彼女のことを知った坂本龍一は、さぞ驚いたことでしょうね。実は、何十年か前に買った坂本がプロデュースした矢野のアルバムは、それまでのものと比べてちょっと馴染めなかったことを思い出しました。しかし、ここでの坂本は、そんな轍を踏むまいと考えたのでしょうか、彼女の魅力を存分に引き出しています。それが結果的に以前のパートナーそっくりの仕上がりになってしまったなんて、なんか皮肉ですね。
4曲目に入っている「hedgehog」というハリネズミの歌が、そんな矢野顕子節全開。「ハリネズミから、ハリをとったら ただのネズミにも、なれない だから3本残しとこ」という歌詞の世界も、まさにアノヤキコです。
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by jurassic_oyaji | 2008-01-25 20:37 | ポップス | Comments(0)