おやぢの部屋2
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WAGNER/Die Walküre
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Birgit Nilsson, Astrid Varnay(Sop)
Ramón Vinay(Ten), Hans Hotter(Bas)
Hans Knappertsbusch/
Orchester der Bayreuther Festspiele
WALHALL/WLCD 0217



この前の「トリスタン」と同じ、1957年のバイロイトのライブ録音です。「指輪」全曲がリイシューされましたが、その中の「ワルキューレ」を聴いてみましょう。実は、この2年前、1955年のライブが、なんとステレオでちょっと前にリリースされて話題になったことがありましたが、こちらは前回と同じちょっと怪しげなモノラル録音です。
その怪しげさは、今回も健在でした。咳払いのなんと多いこと、バイロイト音楽祭は、確か夏の間に開催されていたはず。こんなに風邪をひいている人が多いなんて、この年のヨーロッパでは夏風邪の大流行でもあったのでしょうか。それよりも目立って聞こえてくるのが、プロンプターの声です。舞台下から歌手の歌い出しのきっかけを小声でささやいて教えてあげる人のことですが、それはとても「ささやく」などというものではなく、はっきりマイクに収められてしまっています。最近では演出がかなり高度になってきたためか、プロンプターを置かない上演が多くなっていますが、このヴィーラント・ワーグナーの時代にはまだしっかり居たのですね。
ここでの指揮者は、ハンス・クナッパーツブッシュ、ヒストリカル好きには神のようにあがめられている方ですね。そんな偉い人が、「クナ」なんてまるで犬か猫か缶詰(それは「ツナ」)のように呼び捨てにされるなんて、かわいそう。確かに、長くて覚えにくい名前ではありますがね。余談ですが、この名前の「ッ」と「ツ」を入れ替えて「クナツパーッブッシュ」だと思いこみ、発音するのにえらく苦労している人がいましたっけ。あなたも言ってみて下さい。はいっ、クナツ・・・。
しかし、この録音をこの前のサヴァリッシュや、55年のカイルベルトと比べてみると、指揮者としての存在感が全く異なっているのが分かります。なんと言っても、オーケストラを完全に掌握していて、まるで一つの楽器のように自由自在に操っているのには驚かされます。それでも、1幕の途中などはちょっと集中力が欠けているような気がしないでもないのですが、それ以降はまさに大きなうねりのような中にオーケストラも歌手も巻き込んで、壮大なグルーヴを見せてくれているのですからね。それはもしかしたら、歌手のちょっとした癖などもしっかり受け止めて、微妙に指揮の方を合わせていた結果なのかもしれません。いずれにしても、こんな指揮をされたら、歌い手は本当に気持ちよくなって自分のベストをさらけ出すことが出来るのかもしれませんね。ほんと、歌の間のちょっとしたオーケストラのフレーズが、まるで歌手の体にからみついているように感じた瞬間が、いったい何度あったことでしょう。
そんな風にうまく乗せられてしまった歌手の筆頭が、ホッターではないでしょうか。なにかともたつき気味の歌い方が、この指揮者のマジックによって全く目立たないようになっていますし、これが2年前と同じ人かと思うほど、音程も安定しています。
他のキャストも、2年前と殆ど同じ、ジークムントのヴィナイも、尻上がりに良くなっていきますね。そして、この年はジークリンデがなんとニルソンになっていますよ。ですから、第3幕ではニルソンとヴァルナイがいっしょに歌っているのを聴くことが出来るのですから、なんと贅沢なキャスティングでしょう。そこでは、まさに不世出の二人のブリュンヒルデが、一歩も譲らぬ貫禄を示してあっているのをまざまざと感じられることでしょう。
その2年前のステレオ録音ですが、これを聴いた後で聴き直してみると、なんだかとても貧弱な音に感じられてしまいます。ちょっといい加減なこのモノラル録音からの方が、はるかに力強いものが伝わってくるのですよ。それはまさにシンプルさの勝利だったのでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-01-27 22:11 | オペラ | Comments(0)