おやぢの部屋2
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LACHNER/Geistliche Chorwerke
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Gerd Guglhör/
Orpheus Chor München
OEHMS/OC 809



フランツ・ラハナーという作曲家は、生年が1803年といいますから、シューベルト(1797年生まれ)とメンデルスゾーン(1809年生まれ)のちょうど中間に生まれたことになります。指揮者としても活躍した人で、1842年には、1829年にメンデルスゾーンによってベルリンで蘇演されたバッハの「マタイ受難曲」を、ミュンヘンで初めて演奏しています(その前の年には、ライプチヒで、メンデルスゾーンによる再演が行われました)。さらに、1865年のワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の初演の際には、ハンス・フォン・ビューローのアシスタントとしてリハーサルの下振りも行っています。
彼の作品は400曲近く、それは多岐のジャンルにわたっていて、8曲の交響曲、8曲の管弦楽組曲といったオーケストラ作品や、室内楽作品、オルガン曲などの器楽曲に加えて、声楽曲の分野でも4曲のオペラを始めとして、ミサ曲やオラトリオ、カンタータ、そして多くの合唱曲や歌曲を作っているといわれています。そんなラハナーの作品の中から、宗教的な合唱作品を集めたものが、このアルバムです。演奏されているのはヘ長調のミサ曲と「スターバト・マーテル」、そして詩篇15番、いずれも二重合唱を必要とする大規模な編成の曲です。
ミサ曲では、ポリフォニーを多用した、まるでルネサンス音楽のような「Kyrie」の美しさに心を惹かれるざんす。もちろんルネサンスにはあるまじき唐突な変化音などは、この時代の作品の証しでしょうか。中間部では、うってかわったホモフォニーの世界、敬虔なその和声は、もう少し後の時代のブルックナーにも通じるものかもしれません。「Gloria」も、メリスマが頻出するバロックっぽいものです。「Credo」が3拍子で始まったのには意表をつかれましたが、このあたりになると、シューマン、メンデルスゾーンの世界でしょうか。最も長い楽章で、その中でさまざまな楽想が登場して、飽きることはありません。「Sanctus」には、型どおりの荘厳さの中にまるで民謡のような素朴さが込められています。「Benedictus」は、ソリストのアンサンブルで始まりますが、その流れるようなメロディはとても魅力的です。同じメロディが合唱によって歌われた後、最後にまたアンサンブルが戻ってくるのも効果的。アルト・ソロが歌い上げる「Agnus Dei」のテーマは短調の切ないものです。最後の「Dona nobis pacem」では長調に変わり、何度も擬終始を繰り返した後しっとりと曲を締めくくります。
息詰まるようなアルト・ソロで、悲しげに始まった「スターバト・マーテル」では、ホモフォニックな合唱がその悲しみを盛り上げます。半音進行を含む、ロマンティックな和声は、宗教曲という枠を超えた、普遍的な訴えかけに聞こえます。最後の部分では、二重合唱を効果的に使ったエコーが聴かれます。
そんな具合に、このラハナーの作品は合唱音楽の歴史を俯瞰したような独特の世界を持ったとても魅力的なものに思えます。おそらく、アマチュアの合唱団のレパートリーとしても格好のものかもしれません。しかし、このアルバムの演奏からは、残念ながらこれらの曲の本当の素晴らしさは伝わっては来ませんでした。ここで歌っているのは、ラハナーが生涯の最後を過ごした地、ミュンヘンの合唱団、しかも、その前身はラハナー自身が指導をしていたこともあるという、由緒正しいものなのだそうです。しかし、現在のメンバー、そして指揮者には、そんな伝統を正しく受け継ぐ能力はなかったように見えます。なにしろ、肝心のソプラノパートが全く生気の乏しい曖昧な歌い方に終始しているのですから。音程は定まらなく、ユニゾンになったときの濁った響きは、気持ち悪くなるほどのものでした。ソリストたちは、もしかしたらこの合唱団のメンバーなのでしょうか。「スターバト・マーテル」の最初に出てくるアルト・ソロなど、悲惨この上ないものです。
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by jurassic_oyaji | 2008-02-02 21:01 | 合唱 | Comments(0)