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スティーヴン・ソンドハイム
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 評判の「スウィーニー・トッド」を見てきました。予告編の段階できっと劇場で見ることにしようと、固く心に誓った作品ですが、それだけ気合いを入れて見に行っても、決して裏切られることはない、素晴らしい映画でした。
 ストーリーの断片はいろいろ聞いていましたから、この映画にはすんなり入っていくことが出来ました。かなりどぎつい表現も有るということでしたが、それはこの監督でしたらいかにもあり得ることです。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のどぎつさを知っていれば、それは難なくクリアできることでしょう。
 実際、この映画でのそのどぎつさは群を抜くものでした。はっきり言ってこれは嫌いな人は大勢いるだろうな、というほどの趣味に悪さです。しかし、私はそういうものは大好き、というか、これはそもそもそういうものが話の中核なのですから、なんの苦にもなりません。それどころか、この主人公二人(デップとボナム・カーター)が「材料」の品定めをしているシーンなどは、とてもレベルの高いジョークに思えるほどでした。いや、そもそもこの作品自体が、極めつけのブラック・ユーモアなのではないのでしょうか。愛するものを失った男の復讐劇と見るのは極めて安直なアプローチに過ぎません。そういった、人の情けのようなものを描くかに見せて、その実最高のニヒルなジョークを仕掛けたもの、少なくとのこの映画に関してはそのようなものに見えてしょうがありません。
 つまり、復讐が成就するかに見えて、実際には主人公は死んでしまうのですから(あっ、ネタバレだ!)そもそもそんなハッピーなものではあり得ないのは明らかです。ですから、彼らの哀しみはひとまずどこかに置いておいて、このエンディングのとびっきりのユーモアを、心から楽しもうではありませんか。
 原作のミュージカルは、実は日本でも宮本亜門の演出でつい最近上演されていたほどの有名なものだったのですね。これの作詞、作曲をしたスティーヴン・ソンドハイムという人のことも、今やブロードウェイ随一のミュージカル作曲家であるというのも、今回初めて知りました。しかし、この人の名前は実は「ウェスト・サイド・ストーリー」の作詞家として、私の中にはインプットされているものでした。つまり、彼の詞にあのバーンスタインが曲を付けて、あれだけの大ヒット・ミュージカルが誕生したということになるのです。あのころはまだ20代だったソンドハイム、ここで出会ったバーンスタインの薫陶こそが、今のこの名声のルーツなのでしょうか。
 しかし、それとは全く逆の可能性も有るということを考えてみるのも、面白いことなのかもしれません。つまり、ソンドハイムは作詞だけではなく、作曲面でもあの名曲の誕生に関与していたのではないか、という可能性です。その傍証はいくらでも挙げることは出来るでしょう。最近リリースされた「WSS」のスペシャル・ボックスには、貴重な写真がおさめられた分厚いブックレットが付いていますが、その中にソンドハイムがピアノに座って歌手のリハーサルを行っている写真があるのですよ。ですから、少なくともバーンスタインのアシスタントとしての仕事は行っていたことになります。あるいは、「君が作った曲なんだから、リハーサル、やってみてよ」みたいなことがあったのかも。さらに、バーンスタインの作品はミュージカルに限らず夥しいものが発表されていますが、その中では「WSS」だけが群を抜いて心を打つ名曲が集まっているように、私には感じられるのです。同じミュージカルでも「キャンディード」などは、日本人によるステージを見た限りでは、とても同じ作曲家の作品とは思えないようなつまらない音楽でした。
 「スウィーニー・トッド」には、初めて聴いたものなのに素晴らしい感銘を与えられる曲が盛り沢山でした。それは、「WSS」を初めて見たときに味わったものと同じ種類の感銘、そして、けっして「キャンディード」では味わうことの出来ないものでした。映画の中で何度も聞こえてきた「ジョアンナ」という美しいバラードが、私には「マリア」のように聞こえてなりません。
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by jurassic_oyaji | 2008-02-03 21:59 | 禁断 | Comments(0)