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Greatest Hits
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The King's Singers
EMI/514587 2



イギリスのヴォーカル・グループ「キングズ・シンガーズ」が結成されたのは1968年、今年2008年はちょうど40周年にあたります。そこで、それを記念して、EMIからこんなコンピレーション・アルバムがリリースされました。2枚組の構成、1枚目にはポップス、2枚目にはクラシックということで、全部で48曲ものナンバーが収められています。
彼らは、例えば1948年に結成され、適宜メンバーを入れ替えるという手法で現在まで60年間も生きながらえているという希有なグループ「フォー・フレッシュメン」と同じパターンで40年のキャリアを築いてきました。カウンター・テナー2人、テナー1人、バリトン2人、ベース1人という当初の6人編成は全く変わってはいませんが、最も長い期間在籍していたオリジナル・メンバーのアラステア・ヒューム(カウンター・テナー)が1993年に脱退したために、今ではオリジナル・メンバーは一人も残ってはいないようになっています。テナーあたりは、確か現在では4代目のはず。さらに、所属レーベルも当初のEMIにいたのは1980年代の終わりまで、90年代に入るとさまざまなレーベルを転々とするようになり、最近になってやっとSIGNUMに落ち着きました。
もちろんこれはEMI時代の録音を集めたものですから、80年代の彼らの演奏しか聴くことは出来ません。その中でも、メンバーの違いによって同じグループであってもちょっと異なる面が見られるのが面白いところでしょう。大半はカウンター・テナーが、さっきのヒュームの他にナイジェル・ペリーとジェレミー・ジャックマンという、かなり上品なテイストを持っている人たちでしたから、サウンド的にはちょっとおとなしめだったものが、最後の頃になって現在のメンバーであるデイヴィッド・ハーレイが加わってくると、俄然力強い響きに変わってきます。この人はあまりファルセットに頼らない、最近のカウンター・テナーに見られるような傾向の声の人ですから、そこでソプラノパートが充実したのでしょう。
ただ、その逆で、最初の頃のテナー、ビル・アイヴスは力強さと甘さとを兼ね備えた素晴らしいシンガーだったものが、このアルバムの大半で聴かれるロバート(ボブ)・チルコットは、ちょっとビターで(それは「チョコレート)全くどうしようもないイモ、その弊害は、1997年に現在のメンバーのポール・フェニックスに替わるまで続くことになるのです。
EMIからデビューした当初は、ルネサンス期のマドリガルなどでこの時代の音楽の楽しさを存分に味わわせてくれていたものです。ですから、その頃の編曲では、ビートルズ・ナンバーをマドリガル風にパロディにするといった粋なことも行われていました。しかし、次第にこのアルバムで見られるように、ごく普通のコーラス・アレンジになってしまったのは、何か寂しいものが感じられてしまいます。ただ、現代作曲家への委嘱作品なども数多く録音していた彼らですから、例えばこの中の「サウンド・オブ・サイレンス」のようなとことんアヴァン・ギャルドの様相を持つ編曲を得たことは、何よりも大きな成果でしょう。サン・サーンスの「動物の謝肉祭」をネタにして、単なるアレンジに終わらないひとつの「作品」を作り上げるようなことも、彼らならではのセンスのなせる業です。しかし、その行き着いた先がヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」のようなものだとしたら、それはあまり幸せなことではなかったような気がしてなりません。
そんな判断の根拠ともなるべき編曲者の名前が全くクレジットされていないのは、コンピレーションの宿命なのでしょうか。メンバーの表記にも少なからぬ誤りが見られるのも、もはやレーベルを離れたアーティストとしての扱いなのでしょう。使われている写真だけは現在のメンバーのものだというのが、ちょっと異様です。
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by jurassic_oyaji | 2008-02-06 20:01 | 合唱 | Comments(0)