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Hungarian Electroacoustic Research
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HUGAROTON/HCD 32449


ハンガリーの現代作曲家、イシュトヴァーン・シゲティについては、こちらでフルートのための作品をご紹介したことがありました。その時に、彼は元もとはライヴエレクトロニクスのようなものを作っていた人だ、と言っていましたね。その「本業」の方が収録されているのが、このアルバムです。ここにはシゲティをはじめ、同じ世代のハンガリーの作曲家たちの作品が集められています。それぞれに個性が発揮されていて、単に「電子音楽」という範疇でくくってしまえないような広がりを持っているのが、なかなか面白いところです。
ここでは6人の作曲家による8曲の作品を聴くことが出来ます。そのうちの5人は1950年代以降の生まれですが、一人だけヤーノシュ・デシェーニーという人だけがちょっと世代の異なる1927年生まれです。彼の作品は「Stones」というものなのですが、「電子音楽」というよりは、そのもっと前の形の「ミュージック・コンクレート」の手法をとっています。実際の音を録音して、それをさまざまに加工するというものなのですが、ここでは聴いた感じではその「加工」はあまり施されてはいないように思えます。どちらかというと、音源のコラージュといったおもむきでしょうか。ただ、その音源が火山の爆発を思わせるような壮大なものだったりしますから、まるでドキュメンタリー・フィルムのサントラを聴いているような気になってきます。後半では、タイトルにある「石」が登場、それらを打ち鳴らすリズムでミニマルっぽく迫ります。
ギュラ・ピンテールという人の「トッカータ」は、もともとはオルガンのための曲だったそうです。それを、おそらくサンプリングしたオルガンの音で再現するという趣向でしょうか。最初のうちは普通のオルガンのように聞こえているものが、次第にエレクトロニクスならではの独特の表現に変わっていくのが面白いところでしょう。
ベーラ・ファラゴーさんの「Dirty Works」は、SPレコードのようなスクラッチ・ノイズを素材にした作品、そのレコードに録音されているのは笛の音だそうですが、変調された音の中からその素朴な音色が聞こえてくるというのが、なんともレトロです。そのレトロさは、「ビーッ」という単純な三角波(最初は、装置がおかしくなったのかと思いました)の中にあって、確かに際だつものです。
ここではミクローシュ・スガールという人と、シゲティの2人だけが、それぞれ2曲を提供しています。この2人はまっとうな(というのも変ですが)電子音楽というもので勝負です。スガールはおとなしめ、シゲティは過激な音源という、対照的な「作風」を聴くことが出来ます。スガールの「Birds of the Crater」という曲などは、実際に火山の噴火口(クレーター)の中で演奏されたというものですが、まるで「姫神」か「喜多郎」かといったメディテーションの世界です。マネをしたわけではないでしょうが(それは「イミテーション」)。ちなみに、ジャケットの印刷では、この曲とさっきの「Dirty Works」の時間表示が入れ替わっています。対するシゲティの「Hypostasis」は、人間の声も素材にしていて、まるでリゲティの「アバンチュール」を思わせるものです。
そのリゲティの作品に、「ポエム・サンフォニク」という、100台のメトロノームを一斉に鳴らすというとんでもない曲がありますが、イシュトヴァーン・ラーングの「Capriccio metronomico」というタイトルを聞いてその曲のことが頭をよぎったとしたら、その人はかなりのマニアに違いありません。まさにこれは、そのハンガリーの先達へのオマージュとしての作品であるはずです。メトロノームのビートをサンプリングして、さまざまに組み合わせるという曲なのですが、その最後にはリゲティが作り上げた100台のメトロノームのクラスターが、高らかに鳴り響いているのですから。
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by jurassic_oyaji | 2008-02-16 22:51 | 現代音楽 | Comments(0)