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RAYKHELSON/Jazz Suite and other works
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Yuri Bashmet(Va, Cond)
Igor Butman(Sax)
Igor Raykhelson(Pf)
Moscow Soloists
TOCCATA/TOCC 0055



イゴール・レイヘルソンというロシアのピアニスト/作曲家のアルバムです。1961年にロシアのサンクト・ペテルブルク(当時は「レニングラード」でしたね)で生まれたレイヘルソンは、当地の音楽院でクラシックとジャズの両方のピアノを学びます。卒業後彼は「エマージング・スターズ」という音大生が作ったオーケストラ(それは「ライジング・スター」)みたいな名前のジャズ・カルテットを結成して、ソ連(当時)国内をツアーで回ったと言うことです。1979年にニューヨークに移ってからは、エディ・ゴメスなどといったそうそうたるジャズマンたちと共演するかたわら、クラシックのコンサート・ピアニストとしても室内楽や協奏曲を演奏するという多才なところを見せています。
1998年に、このアルバムでもソリスト、そして指揮者として演奏に加わっているヴィオラ奏者ユーリ・バシュメットに出会ったことにより、彼のために多くの曲も作るようになります。その最初の成果が、アルバムタイトルでもある「ジャズ組曲」です。ショスタコーヴィチにも同じような名前の曲がありましたが、あのような完全に「ジャズ」という概念をはき違えたものではない、これはしっかりジャズのイディオムが生かされたなかなか興味深い作品です。
正式なタイトルを「ヴィオラ、サクソフォーン、オーケストラのためのジャズ組曲」というものですが、もちろんヴィオラパートはバシュメットのために、そしてサックスのパートは長年の仲間であるテナー・サックス奏者イゴール・ブットマンために用意されたものです。その他に、レイヘルソン自身がピアニストとして参加、ソロピアノだけではなく、ドラムスとベースが加わったトリオとしても重要なパートを担います。全部で7曲から成る「組曲」、それぞれの曲の性格が見事に「クラシック」と「ジャズ」に分けられているというのが、まず見事な構成となっています。最初の曲ではまるでピアノ・コンチェルトのような格調高いレイヘルソンのピアノが聴けたかと思うと、それに続く曲は完全にジャズナンバーになっているという変わり身の早さが素敵です。弦楽合奏がジャズのユニットにからむときも、それはあくまでジャズの語法によるテンションコードによるハーモニーと、シンコペーションといったアレンジとなっています。そこからは、決してジャズとクラシックとの安直な融合は許さないという、双方の分野に秀でた作曲家のポリシーのようなものを感じることはできないでしょうか。3曲目には「Take Three」というサブタイトルが付けられていますが、これはあのポール・デスモンドの名曲「Take Five」へのオマージュなのでしょう。
ピアノ・トリオの軽快なグルーヴ感とともに圧倒的なのは、ブットマンのサックス・ソロ。ヴァイタリティあふれるモーダルなプレイは、ひとしきり爽快な思いを与えてくれるものです。もちろん、バシュメットのソロもあるのですが、あいにくこちらはアドリブ・ソロではなく、いかにも記譜されたものをそのまま弾いているという堅苦しさがもろに出てきてしまって、「ジャズ」として聴くには辛いものがあります。まあ、本人が楽しんでいればそれは別に構わないのでしょうが。
ただ、彼の本領は、やはりしっかりとした「クラシック」の作品の方でこそ発揮できるはずです。2002年の作品である「ヴィオラと弦楽合奏のためのアダージョ」や、ヴァイオリン・ソロにエレーナ・レヴィチを加えた2003年の「ヴァイオリン・ヴィオラと弦楽合奏のためのリフレクションズ」では、「ヒーリング」までに堕してはいない心地よい安息の世界が胸を打ちます。
このアルバムの中では最も新しい(2005年)「弦楽合奏のための小交響曲」は、それこそショスタコーヴィチが作ったかと思えるようなネオ・クラシカルなテイスト、レイヘルソンの幅広い嗜好がうかがえるものです。
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by jurassic_oyaji | 2008-03-13 20:33 | オーケストラ | Comments(0)