おやぢの部屋2
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The Romantic Flute
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Jeffrey Khaner(Fl)
Hugh Sung(Pf)
AVIE/AV 2131



最近は、フルーティストのソロアルバムで「これは」というものがあまりリリースされないようになっているような気がしませんか?現に、この「おやぢの部屋」でも、フルートがらみのレビューで一人気を吐いているのがシャロン・ベザリーというのでは、あまりに寂しすぎます。確かに、今の時代には、新しいCDをぜひ手にとって聴いてみたいと思えるような、例えばランパル、ニコレ、そしてゴールウェイといった、真の意味でのソリストは、もはやいなくなってしまったような気がしてなりません。
とは言っても、ジェフリー・ケナー(「カーナー」という表記もありかーなー?)という、一応それなりの評価が固まっているフルーティストがこうしてアルバムが出したりすれば、それだけで食指が動いてしまい、とりあえずは紹介しておかねば、ということになってしまいます。
ケナーは、1990年からフィラデルフィア管弦楽団の首席奏者を務めているフルーティストです。その前にはクリーヴランド管弦楽団に在籍していたといいますから、輝かしいキャリアの持ち主と言うことが出来るでしょう。確かに、オーケストラの中で聴くことの出来る彼の音は、独特の存在感を誇ってはいます。
彼はまた、ソリストとしてもこのレーベルから多くのアルバムを出しています。クララ・シューマンのヴァイオリン曲を初めてフルートで演奏したというような珍しいものもありましたね。今回はロマン派の名曲を集めたもの、ヴィドールの組曲、ゴダールの「3つの小品」、ライネッケの「ウンディーヌ」、フランクのヴァイオリン・ソナタのフルート編曲、そしてサン・サーンスの「ロマンス」という、フルーティストであればだれでも1度は手がけたことのある曲のオンパレードとなっています。そのような、いままでに多くの人が演奏しているものを敢えてアルバムとして世に問おうというのですから、実はこれほど恐ろしいこともないのではないでしょうか。CDまで発表したのですから、そこには過去の名演を超えることが出来たという自信があったので、それをぜひ聴いてもらいたいという気持ちがあったのでしょうか。あるいは、そんな気負いなどはさらさらなく、単に自分の普段の演奏を多くの人に聴かせたいためだけに録音したのでしょうか。その二つの姿勢の違いは、かなり大きなものがあるはずです。
しかし、このCDから聞こえてきたものは、なんとも平凡で起伏に乏しい、言ってみれば楽譜をただ音にしただけというものでした。そこからは、一流の演奏家であれば間違いなく与えてくれるはずの、胸をえぐられるような熱い思いなど、到底聴き取ることは出来なかったのです。
しかし、ここに収められている曲というのは、まさに「ロマンティック」なテイストをたたえたものばかりなのですから、たとえ一流のものでなくとも、そこから「ロマン」を感じられないというのは、ちょっと困ったことなのではないでしょうか。ライネッケの「ウンディーヌ」が、まさにそんな曲、この時代の作曲家がフルートという楽器に対して非常に冷淡だった(それは、楽器が改良過程であったなどの理由があるのですが)中にあって、殆ど唯一の「ロマン派のフルートソナタ」として、その存在価値を一手に引き受けているような立場にある作品なのです。従って、この曲の中にあるテーマは、どんなものでも「ロマンティック」に歌いきって欲しいと思っても、そんな見当はずれなことではないはずです。八分の六拍子に乗って出てくる、最初のただの分散和音に過ぎないテーマですら、ここでのケナーのような素っ気ない吹き方では募るのは失望感ばかり、第3楽章の本当に夢見るようなテーマで涙を流そうなどと思うのが、そもそものまちがいだったと知るのは、なんと辛いことなのでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2008-03-19 22:10 | フルート | Comments(0)