おやぢの部屋2
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BUXTEHUDE/Sonatas Op.1
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L'Estravagante
Stefano Montanari(Vn)
Rodney Prada(Va d G)
Maurizio Salerno(Cem)
ARTS/47731-8(hybrid SACD)



昨年2007年はディートリヒ・ブクステフーデの没後300年という記念すべき年でした。そのおかげで、今までは殆どオルガン曲しか知られていなかったこの作曲家の全貌が、録音によってほぼ明らかになるという快挙が成し遂げられることになりました。北ドイツの町リューベックの聖マリア教会のオルガニストという職務から生まれた膨大な量のオルガン曲と、そしてカンタータなどの宗教的な声楽曲は、まるで宝の山のようなもの、この方面の愛好家にはそれらの録音はとてもうれしい贈り物となったことでしょう。
さらに、教会には関係のない器楽曲もたくさん作っているということも、だいぶ知られるようになってきました。それは、クラヴィーア・ソロのための曲と、アンサンブルによる室内楽作品です。その中で、彼の作品の中で唯一作品番号が付けられた(つまり、出版された)ものが、作品1と2のそれぞれ7曲から成る「ソナタ」です。楽器編成はヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、そしてチェンバロというものですから、通奏低音の伴奏によるヴァイオリン・ソナタのようなイメージを持つかもしれませんが、ここでのヴィオラ・ダ・ガンバは、チェンバロと一緒に同じ低音を演奏するのではなく、しっかりがんばって自分の独立した声部を持っています。つまり、これは3つの声部による「トリオ・ソナタ」ということになります。
そんな曲を演奏、そして録音するために、「ブクステフーデ・イヤー」に結成されたのが、「レストラヴァガンテ」というユニットです。モンタナリ、プラダ、サレルノという、古楽器の世界では名の知れたメンバーは、このレーベルにこの作品1と、作品2(もうすぐ国内でもリリースされます)を録音、さらに2009年までの演奏活動と録音の予定も決まっているそうです。
この3人によるアンサンブルをとらえた録音は、「コンプレッサーもイコライザーも一切使っていない」と言うだけあって(実は、そんなに珍しいことではありませんが)、素晴らしいものです。バロック・ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、そしてチェンバロという繊細極まりない楽器にこそ、SACDのスペックはその威力を発揮しているに違いありません。特に、低音楽器でありながら、なんともフワフワとした音を漂わせているヴィオラ・ダ・ガンバが、他の楽器に埋もれることなく十分にその細やかな音色を主張してくれているのはまさに感動的です。この楽器がメロディ楽器として表に立ったときの、なんと味わい深いことでしょう。それを迎え撃つヴァイオリンが、モダン楽器とは全く異なる粗野な面持ちを披露してくれていますから、そのキャラクターの違いは格段に印象的です。これでこそ、3つの声部が対等に渡り合うトリオ・ソナタの醍醐味が存分に味わえるというものでしょう。まるで目の前で演奏しているような生々しさに加えて、録音会場の広い空間の雰囲気も十分に伝わってくる素晴らしい録音です。
ブクステフーデの作品を聴くときにいつも感じる、あふれるばかりのファンタジーと、その場面転換の鮮やかさというものが、この「ソナタ」の中にもしっかり宿っていることも、この3人の情熱的な演奏によって容易に知ることが出来ます。それぞれの曲は7つとか8つといった多くの楽章、というよりは楽想の切れ目によって分かれていますが、それらは彼のオルガン曲のように、まるでふと思いついたかのように瞬時にその光景を変えてくれるものなのです。イタリア趣味も抱負に盛り込まれていて、バッハのような厳格さとはまた別の、魅力あふれる作品です。
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by jurassic_oyaji | 2008-03-23 23:50 | 室内楽 | Comments(0)