おやぢの部屋2
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MARSH/Symphonies
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Matthias Bamert/
London Mozart Players
CHANDOS/CHAN 10458



モーツァルトと同時代の作曲家たちのオーケストラ作品を集めたCHANDOSのこのシリーズがすでに20集もリリースされていたことは、今回の最新アルバムを入手するまで知りませんでした。そのラインナップを見てみると、三分の一は名前すらも知らない人たちでしたよ。もちろん、このジョン・マーシュという人にも、ここで初めて出会いまーしゅた。
モーツァルトが生まれる4年前、1752年にイギリスで生まれたマーシュですが、亡くなったのは1828年ですから、モーツァルトの倍以上生きたことになります。生涯に残した作品は350曲あまり、それらはオペラを除く全ジャンルに及び、39曲の交響曲、15曲の協奏曲、12曲の弦楽四重奏曲、そして鍵盤楽器のための数多くの作品や、合唱曲、歌曲などが含まれます。もちろん、彼の生前に出版されたものはごくわずかですが、そんな多作をなしたにもかかわらず、彼自身は専門の音楽教育を受けてはいない、というのがユニークなところです。彼が受けたのは法律の教育、本来は弁護士を職業としていた人なのですからね。
このアルバムに入っているのは、最も「晩年」の作品でも1796年のものですから、時代的にはまさにモーツァルトが生きていたのとほぼ同じ時期に作られたものばかりということになります。それらは確かに「その時代」の様式を色濃く反映したものではありますが、当然のことながらマーシュ自身のアイデンティティもかっちりと現れているものでした。
この中では最も「若い」頃の作品となる、これが世界初録音の交響曲第8番(1778年)と、交響曲第2番(1780年。良くあることですが、この番号は出版された順序ですから、作曲年代とは異なっていて混乱します)は、型どおりの3楽章形式のもの、いかにも溌剌な両端楽章の楽想は、まさに心を躍らせてくれる魅力を持っています。しかし、その味わいの中には微妙なところでその時代の様式を超えた「新しさ」が見え隠れすることに気づくことでしょう。例えば「2番」第1楽章の第2テーマでは、メロディの中に当時としてはちょっと和声的に違和感のある音が使われています。それは、現代の我々にはなんということのない仕掛けなのですが、モーツァルトの調和の世界の中ではまず使われることはないだろうな、と思われるような音なのです。同じように、「8番」の最初のテーマも、執拗な繰り返しから広がりを作っていくという、その時代からほんの少し先を行っているような新鮮な驚きを感じさせられるものです。
同じ頃に作られた「2つのオーケストラのための会話の交響曲」(1778年)という作品では、その名の通り2組のオーケストラ(と言っても弦楽器だけですが)が向かい合わせに配置されていて、まさに「会話」を交わしているようなフレーズのやりとりが行われます。この曲では前にヴァイオリンとヴィオラのソリストが出てきてソロやアンサンブルを行う場面もあり、少し前の時代の合奏協奏曲を思い起こさせられるようなアイディアにも満ちています。
もう少し後の作品、1790年の交響曲第7番(これも世界初録音)には、「狩り」というサブタイトルが付いています。これは文字通り狩りの情景を描いたプログラム・ミュージックです。朝に仲間を呼び合うことから始まって狩りが始まるまで、単純なテーマの積み重ねの中に楽器の扱いなどに行き届いた配慮があって、まさに生き生きとした狩りの情景が眼前に迫ってくるような音楽に仕上がっています。
バーメルトの指揮するロンドン・モーツァルト・プレイヤーズは、こんな誰も知らなかった曲を、まるで宝の山を掘り当てたような気持ちで楽しそうに演奏してくれました。そこから見えてくるマーシュのたぐいまれな才能、それはもしかしたらモーツァルトなどよりもはるかに人を魅了するものなのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2008-04-06 22:05 | オーケストラ | Comments(0)