おやぢの部屋2
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WAGNER/The Ring, An Orchestral Adventure
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Neeme Järvi/
Royal Scottish National Orchestra
CHANDOS/CHSA 5060(hybrid SACD)



ヤルヴィが指揮したワーグナーなんて、ちょっと珍しいレパートリーなのではないでしょうか。ただ、このタイトル曲「指輪・管弦楽の冒険」というのはワーグナーのオリジナルではなく、彼の「指輪」の中の音楽を切り刻み、それを集めて貼り付けたものなのです。それが、良くある「ハイライト」のように、聴かせどころの曲をそのまま並べたのではなく、それらを切れ目なくつないで一つの作品にした、というのが、ユニークなところです。
そんな、言ってみれば「指輪」の「再構築」を行った人は、オランダのヘンケ・デ・ヴリーガーという人です。もちろん、フリーターではなく、打楽器奏者で作曲家というきちんとした職業に就いています。彼が1991年に作ったこの「作品」は、「指輪」の音楽を素材にして、まるで4楽章から成る交響曲のようなしっかりとした「構成」を持つものとして仕上がっている、と言われています。確かに、オリジナルのオペラの流れをそのまま踏襲したこの「作品」は、「ラインの黄金」の導入部から「ワルハラ」までが堂々たる第1楽章となっています。しかし、次の「ワルキューレ」からは「ワルキューレの騎行」と「魔の炎の音楽」しか使われていなくて、それで「スケルツォ楽章」と片づけられているのは、ちょっと寂しい気がします。逆に「ジークフリート」は、「森のささやき」から始まってブリュンヒルデとジークフリートの愛のデュエットまでをたっぷり用いて、リリカルな「アンダンテ楽章」を形作っています。そして、フィナーレはもちろん「神々の黄昏」ということになります。
それはなかなか興味深い「冒険」ではあるのですが、別々のところから持ってきた曲を、あくまで一つのつながりとして聴かせようとするためにデ・ヴリーガーが行っていることは、とても不自然に聞こえてなりません。曲と曲の間に、あたかも自然であるかのように見せかけるために「つなぎ」の部分を作って挿入しているのですが、それが逆に耳障りになってしまっているのです。最悪なのは、「神々の黄昏」の楽章での「葬送行進曲」へのつながりの部分です。そこでは、かなり長い時間にわたって、ワーグナーのモチーフを使ってデ・ヴリーガーが新たに作り上げた音楽が鳴り響きます。彼はおそらくワーグナーになりきったつもりで、それらのモチーフを論理的につなぎ合わせたと思っているのでしょうが、そこからはワーグナーとは全く無縁の醜悪な音楽しか聞こえてはこないのです。そう言えば、英語の「冒険」という言葉には、「向こう見ず」や「山師」といった意味もありましたね。
そんなとんでもない編曲ですが、ヤルヴィは精一杯仕事をこなしているように見えます。特に後半での甘い情景の歌い上げや、クライマックスでの盛り上がりなどはなかなか楽しめます。ただ、前半ではなにか集中力の定まらないもどかしさを感じてしまいます。特に、冒頭の混沌とした部分のなんとも雑な扱いには失望を禁じ得ません。これはせっかくのSACDを使いこなせていない録音スタッフにも責任があることなのかもしれません。なにしろ、音が団子になってしまって、肝心のホルンの動きなどが全く聞こえてこないのですからね。「ワルハラ」でのワーグナー・チューバも、なんとも薄っぺらな音ですし。
ただ、カップリングの、こちらはワーグナーのオリジナル「ジークフリート牧歌」でも、なんだかあまりやる気がないように聞こえてくるのはなぜでしょう。愛情たっぷりの思いで作られたこの曲には、おもいっきり感情を込めて歌って欲しいところがたくさんあるのに、ヤルヴィはいとも冷淡な扱いしかしてくれていないのです。ここまで無神経な演奏に終始されてしまうと、この指揮者はそもそもワーグナーに対して共感出来るものがなにもないのでは、とさえ思ってしまいます。
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by jurassic_oyaji | 2008-04-28 21:05 | オーケストラ | Comments(0)