おやぢの部屋2
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RAILROAD RHYTHMS/Classical Music about Trains
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Jiri Starek/
SWR Rundfunkorchester Kaiserlautern
HÄNSSLER/CD 93.187



有名なオネゲルの「パシフィック 231」のような、蒸気機関車の走行音をオーケストラで再現した曲が集められたもの・・・のはずです。それにしても、そんな曲だけが13曲も集められたのですから、ちょっとすごいというか、無謀というか。
世界中の作曲家による「鉄」の音楽、アメリカ代表はまずエーロン・コープランドです。彼の「ジョン・ヘンリー/鉄道バラード」という曲は、確かに機関車の模倣という形をとってはいますが、えらく屈折した情感まで伴ってくるのはなぜなのでしょう。他の彼の作品同様、どこか住む世界が違うような空虚さに、こんな曲までもが支配されている、というのが興味あるところです。そして、彼の流れをくむレナード・バーンスタインのエントリーもミュージカル「オン・ザ・タウン」の中の「地下鉄乗車と想像上のコニー・アイランド」という、シーン・ミュージックでした。これは電車そのものの描写ではなく、そのようなシーンを暗示するような音楽、ちょっとアルバムの趣旨からは離れるようなものです。
しかし、そんな文句は言ってはいられません。チェコのアントニーン・ドヴォルジャークという、「超」のつく「鉄」マニアの名前があれば、だれだって、さぞや精密な、そう、まるで忠実に縮小された鉄道モデルのように細部にまでこだわった音楽のジオラマを期待してしまうはずですよね。ところが、聞こえてきたのはあの有名曲「ユモレスク作品101の7」ではありませんか。ここからいったいどんな蒸気機関車を想像しろと言うのでしょうか。それに対するライナーでの言い訳は、「汽車に乗ってたどり着いた避暑地でのすがすがしい空気」なんですって。
そこで、オネゲルのようなまっとうな描写音楽は、やはりフランス圏の(オネゲルはスイス人)作曲家にかぎるということになります。イベールの「地下鉄」や、ダンディの「緑の地平線」などには、確かにそんな期待を裏切らないものがあります。その上で、いかにもフランス人らしいウィットも。イベールの曲の最初に聞こえる警笛の音が、ベートーヴェンの「第9」の第4楽章の最初のハチャメチャな和音そっくりなのは、単なる偶然ではないのかもしれませんよ。
サンバの国ブラジルの作曲家、エイトール・ヴィラ・ロボスの「ブラジル風バッハ第2番」からの「カイピラの小さな汽車」となると、汽車も踊り出します。それは、単純なビートではない、シンコペーションが奏でる軽快さ。あいにく、このオーケストラにその軽快さが殆ど備わっていないことから、ちょっと不器用な踊りにしか聞こえないのが残念なところ。同じように、シュトラウス・ファミリーの曲も、あまりに「機関車」を意識しすぎたために本来のダンス・ミュージックからはほど遠い仕上がりになってしまいました。
しかし、「北欧のシュトラウス」と呼ばれたデンマークの作曲家ハンス・クリスティアン・ロンビの「コペンハーゲンの蒸気機関車ギャロップ」は、まさにオーケストラで演奏された蒸気機関車そのものでした。汽笛の音やスチームのリズムを、あくまで単純に楽器によって再現しようというリアリズム、それだからこそ自然に体が動き出してしまうほどの軽快感が生まれるのでしょう。頭が空っぽになってしまうほどの楽しさは、ちょっとクセになってしまうほどの魅力です。でも、演奏する側にしてみれば、ひたすら単純なリズムを刻み続けている低弦などは、相当のストレスが募ることでしょうね。それが電子音のパルスによって解消されるまでには、ドイツのテクノバンド、クラフトワークが「ヨーロッパ特急」を発表するまで、もう100年ほど待たなければなりません。
なんでも、指揮者のスターレクは、お父さんが鉄道マンだったんですってね。宇宙船を運転していたのは、別の人(それは「スタートレック」)。
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by jurassic_oyaji | 2008-04-30 21:02 | オーケストラ | Comments(0)