おやぢの部屋2
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FIESTA
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Gustavo Dudamel/
Simón Bolívar Youth Orchestra of Venezuela
DG/00289 477 7457
(輸入盤)
ユニバーサル・ミュージック
/UCCG-1395(国内盤)


このコンビの最初のアルバムがリリースされたときには、国内盤が出たのは輸入盤が出てから3ヶ月以上経ってからのことでした。あまりにマイナーなアーティストなので、国内盤が出ることはないのかな、と思い始めていた頃にひょっこり出た、という感じ、担当者のためらいが感じられたものでした。しかし、3枚目ともなると、どうでしょう、殆ど輸入盤と同時発売、いや、もしかしたら国内盤の方が先行されてリリースされていたのかもしれない、と思えるほどの機敏なセールスに変わっていたのですから、その間に彼らに対する評価が決定的に変わってしまっていたことがよく分かります。
あるいは、最近この国のオーケストラによる青少年の更正プログラムの様子が紹介されたドキュメンタリー映像が、テレビで放映されたことも大きな要因だったのかもしれませんね。なにしろ、このオーケストラのメンバーだったコントラバス奏者が、今ではベルリン・フィルに入団しているというのですからね。
「フィエスタ」などという明るいタイトル、原色をふんだんに使ったジャケット、そしてホルン奏者が立ち上がって楽器を振り回しているこの写真を見れば、このアルバムはいかにもラテン・アメリカらしいリズミカルでノーテンキな音楽で満載のものなのだろうと思ってしまうことでしょう。しかし、そんな期待は実際の演奏を聴くと見事に崩れ去ってしまうはずです。そもそもここで取り上げられている作曲家にしても、普通に馴染みがあるのはアルゼンチンのアルベルト・ヒナステラぐらいのもの、他の人は殆ど初めて聞く名前ばかりですし。
最初に聞こえてくるのが、そんな初体験の作曲家、メキシコのシルベストレ・レブエルタスの「センセマヤ」という曲です。猟師に撃たれて食べられてしまう狸がいたというところではありません(それは「センバヤマ」)。静かに始まるなにやら神秘的な7拍子のオスティナートに乗って、ポリリズムの世界が次第に盛り上がる、という趣向ですが、そこにはうわついたリズムなどは存在せず、真摯な音楽表現に満ちあふれています。
彼らの母国ヴェネズエラの作曲家では、エベンシオ・カステジャーノスという人の「パカイリグアの聖なる十字架」という曲が聴き応えのあるものです。16分にも及ぶ大作ですが、さまざまな情景がオーケストラの多彩な音色によってある時はしみじみ、ある時は力強く迫ってくるという味わい深いものです。その中で使われるリズミカルな要素は、決して浮き上がったものではなく、全体の流れの中での必然として伝わってきます。さらに、そんなリズムの中にヴァイオリンあたりがいともさりげなくフレーズを挟み込んでいるのを聴くと、彼らの中でのリズムの受け止め方が、とても自然なのがよく分かります。アントニオ・エステベスの「平原の真昼」という曲も、叙情的で大人の情感に満ちた素晴らしい曲です。
アンコール(これは一応ライブ録音)で演奏されていたのが、唯一南米の作曲家ではないレナード・バーンスタインの「マンボ」。アメリカのクラシック(というか、ミュージカル)の作曲家が、南米のリズムを意識的に強調して使ったこの作品で、逆に彼らがごくさりげない動きだけで見事なグルーヴを出しているのが、面白いところです。
思うに、これは次期ロス・フィルの音楽監督というメジャーなポストを手にしたドゥダメルが、ラテン・アメリカの「現代作品」をきちんと知ってもらおうという意図のもとに行った録音なのではないでしょうか。いたずらにノーテンキなことだけをやっている国民では決してないことを、世界に向けて発信しようとしていたのかもしれません。これは、とても素晴らしいことです。我々日本人が外国にもたれている印象が、例えば外山雄三の「ラプソディ」などという愚にも付かない駄作によって作られているのだとしたら、これほど情けないことはありませんからね。
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by jurassic_oyaji | 2008-05-06 20:04 | オーケストラ | Comments(0)