おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphonie No.1
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Jonathan Nott/
Bamberger Symphoniker
TUDOR/7147(hybrid SACD)



ノットとバンベルク交響楽団のマーラー第2弾です。前回「5番」が出たときはそれほど強い印象はなかったのですが、今回はその素晴らしい録音に、まず魅了されてしまいました。第1楽章の冒頭で演奏される弦楽器のフラジオ(ハーモニクス)の、なんと美しいことでしょう。塩加減も頃合いですし(それは「甘塩」)。それは、おそらく生で聴いてもこれほどピュアな響きを感じるのは難しいのでは、と思えるほどの、透明で、なおかつ芯のあるものだったのです。ただ、同じ部分をCDレイヤーで聞き比べてみるとそれほどではない平板なものだったので、これはまさにSACDのフォーマットでしかなし得ないことだったのでしょう。確かに、「5番」を聴いた頃にはまだCDしか聴くことは出来ませんでした。
この楽章、弦楽器の普通の奏法でも、とってもふんわりとした、幸せになれる響きが心地よいものでした。このオーケストラが、こんなに洗練された音色をもっていたなんて、ちょっと意外な発見です。そんな美しい響きに乗って、ノットの指揮はあくまで穏やかに進んでいきます。そこにはマーラーの持つ「熱」や「狂気」といったものは皆無です。それだからこそ、この楽章の最後のクライマックスも、不必要な盛り上げ方をしなくても、すんなり快適な高揚感を与えることが出来ているのでしょう。
そのような知的な設計は、全曲を通して完璧に構築されているように見えます。最後の楽章でも、さまざまな要素が飛び交う場面で一緒になってハイにさせられる、ということは決してありません。むしろ、そんな素材を冷静に眺めているうちに、いつの間にかクスリが効いてきたかな、と感じられるようなある意味爽やかさが感じられるのです。それは、聴くものを置き去りにして突き進むナルシズムとは対極に位置する、真に聴衆の心をつかむことの出来る演奏なのかもしれません。
このSACDのパッケージ、「5番」のときは普通の輸入盤をそのままの形で販売していましたが、今回は日本語のタスキと、「特別日本語解説」というものが輸入代理店によって添付されるようになっています。最近はこういう形の「輸入盤」が増えているような気がします。一見国内盤にも思えてしまうパッケージですから、おそらくこういう風にしておくと、例えば「レコード芸術」あたりの国内盤の批評コーナーで取り上げてもらえるのかもしれませんね。それはそれで宣伝になって結構なことなのですが、その分タスキを印刷したり、それを1枚1枚袋に入れたりという(これは手作業ですからバカにはなりません)コストがかさんで、価格が上がってしまうのは困ったものです。メーカーの宣伝のための費用を、なぜ消費者が負担しなければならないのでしょうか。
しかも、その「特別日本語解説」というのが、とんでもない代物でした。演奏者のプロフィールは本来のライナーノーツをきちんと翻訳したものなのに、肝心の「解説」は、それとは全く無関係な、熱狂的にこの演奏を褒め称えるだけという稚拙な「提灯記事」だったのですからね。こういう文章は「国内盤」にはよく見られるものです。しかし、そういう記事にはきちんと大先生の署名がありますから、それなりの重さ(あるいは責任)が感じられますが、ここには書いた人の名前すら記されてはいません。これは、おそらく代理店の人が、例えば販売店に流すインフォのノリで書いたものなのでしょう。そのような、ある種いい加減な情報と同じものを、一般消費者を相手に「特別解説」などと偽って読ませるというのは、とても許されることではありません。
今回初めてSACD環境で彼らの録音を聴いてみて、そのクオリティの高さに感服し、せっかく良い気持ちになっているというに、それに水を差すような「日本語解説」。この代理店は、絶対なにか勘違いを犯しています。
by jurassic_oyaji | 2008-05-14 19:53 | オーケストラ | Comments(0)