おやぢの部屋2
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Flute & Friends
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Emily Beynon(Fl)
Members of Royal Concertgebouw Orchestra
CHANNEL/CCS SA 26408(hybrid SACD)



ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者エミリー・バイノンは、オーケストラで吹いている現役のフルーティストの中では2番目に好きな人です(1番目はフィルハーモニアのケネス・スミス)。ソロを生で聴いたこともありますが、そのしっかりした音と、細やかな表現はとても好ましいものでした。ソロアルバムも含めて、今までに多くのアルバムを出していましたが、今回久しぶりにリリースされた彼女のアルバムは、コンセルトヘボウの首席奏者(First Chairs)というシリーズの第2弾となります。もちろん、選曲などは全て彼女に任されており、オーケストラの同僚たちとのアンサンブルを楽しんでもらおうという企画ですから、彼女がこのオーケストラからいかに信頼されているかが分かろうというものです。別に酒席を設けて根回しをする必要もないわけでして。
ここで彼女が選んだ曲は、全てが女性作曲家による作品、彼女自身が委嘱した曲も含めて、極めて珍しいものばかりです。その作曲家も、聞いたことがあるのはアメリカ人のエイミー・ビーチただ一人、他の人は今まで全く知らなかった人です。
まずは、1947年にウェールズに生まれたヒラリー・タンのフルート、ヴィオラとハープのための「アマージンの歌より」という、あのドビュッシーの「ソナタ」と同じ編成の曲です。日本の古い音楽にも造詣が深いという作曲家ですが、ここではもっぱらケルト風の旋律が支配的です。ヴィオラのローランド・クレーマーとのアンサンブルが絶妙の美しさを見せています。
次が、ビーチのフルートと弦楽四重奏のための「主題と変奏」という、かなり長い作品です。最初に弦楽四重奏で演奏される、独特の転調が魅力的なテーマに、さまざまな変奏が続きます。それぞれの変奏は特色のあるフォルムを持つものなのですが、この編成自体がどうしても音色的に厚ぼったいものになってしまっている上に、弦楽器のビブラートがかなり耳に付くためになにか冗長な印象は拭えません。いっそ、ノンビブラートで演奏してくれていれば、かなり刺激的だったのではないかと、ちょっとこのメンバーには馴染めませんでした。
そして、ロンドンに1956年に生まれているサリー・ビーミッシュのフルートとピアノのための「私の娘に贈る言葉」は、バイノンの委嘱作品です。今から10年以上前にバイノンが新曲を依頼しようとビーミッシュに電話したところ、電話口には彼女のご主人が出てきて、「今ちょっと手が離せないので、折り返し電話します」と言ったそうです。あとで聞いたら、その時彼女はまさに娘さんを出産していたのだとか。そんなこともあってか、彼女がベースにしたのがジャネット・ペイズリーという人の「私の娘に贈る言葉」という、非常に力強い詩だったのです。出来上がった作品は、フルートの高音を多用した、かなりアヴァン・ギャルドな仕上がりとなっています。ただ、時折メシアンのような息の長いフレーズが顔を見せることもあります。
エジンバラに1928年に生まれたセア・マスグレイヴのフルートとオーボエのための「即興曲」は、まさにこの二つの楽器のバトルとも言うべきもの、アレクセイ・オグリンチュクの芯の太いオーボエとの対決が聴きものです。
最後はかなり時代をさかのぼって、パリのコンセルヴァトワールでアントン・ライヒャに師事したというルイーズ・ファランク(1804-1875)のフルート、チェロとピアノのための「三重奏曲」です。自身も後にコンセルヴァトワールの19世紀でただ一人の女性教授となる彼女の作風は、あくまでオーソドックスなもの、4楽章から成るこの作品も、まるでシューベルトを思い起こさせるような、時代の様式にどっぷり浸かったものです。
ジャケットの写真を見て、バイノンがずいぶん年を取ったような気がしてしまいました。そんな年齢相応の、円熟した音楽性を、この中には聴くことが出来るはずです。
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by jurassic_oyaji | 2008-05-28 20:45 | フルート | Comments(0)