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BEETHOVEN/Piano Concertos Complete
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Friedrich Gulda, 杉谷昭子(Pf)
Holst Stein, Gerard Oskamp/
Wiener Philharmoniker, Berliner Symphoniker
BRILLIANT/93653



ベートーヴェンのピアノ協奏曲「完全」全集。3枚組で2000円以下という、このレーベルならではのリーズナブルな価格設定です。「完全」というのは、ヴァイオリン協奏曲を作曲家自身がピアノ協奏曲に編曲したものが含まれた6曲の「全集」になっているからです。
ジャケットのクレジットを見ると、ライセンス元は「DECCA」となっています。自社制作も行っていますが、基本的にはこのレーベルは世界中の「死んだ」、あるいは「死にかけている」レーベルの音源を集めて発売するというスタンスをとっていますから、そんなところにかつての名門「DECCA」が登場しているというのは、一抹の寂しさを感じるものがあります。確かに、このレーベルはある意味「死んで」います。
1970年、ウィーンのゾフィエンザールで録音」という表記が、ジャケットに記されたデータのすべてなのですが、普通の5つの協奏曲が、そのDECCA原盤、何度となく繰り返しリリースされているグルダによる2度目の録音です。オーケストラはホルスト・シュタイン指揮のウィーン・フィル、エンジニアはゴードン・パリー、ジェームズ・ロックというそうそうたるメンバーです。正確には1970年6月と、1971年1月の2度のセッションで録音が完了したものでした。この頃は、ウィーンでのチーフ・プロデューサーだったジョン・カルショーはすでにDECCAを離れていましたから、プロデューサーはデイヴィッド・ハーヴェイです。
ここでのグルダは、かつて「ウィーンの三羽がらす」という、言ってみれば「ウィーン3大ピアニスト」のような大層な持ち上げ方をされていた評判を裏切らない、ごくまっとうな演奏に終始しています。ただ、今の時点で注意深く聴いてみると、そんなオーソドックスさの中にもグルダらしさを感じ取ることは可能でしょう。弾いている楽器はおそらくベーゼンドルファーでしょうが、そのちょっと甲高い音色が、まるでフォルテピアノのような感触を与えている部分が見られたりもするのです。また、オケと一緒の時にはしおらしく演奏していたものが、カデンツァになるとガラリとテイストが変わって、それまでの重々しさを捨てた軽やかな味が出てくるのも面白いところです。
もう1曲、ヴァイオリン協奏曲に由来する「ニ長調」のピアノ協奏曲については、ライセンスに関する情報は全く記載されていません(ナンセンス!)。演奏しているのが杉谷昭子(すぎたにしょうこ)さんという日本人、1947年生まれといいますから、もはやベテランのピアニストです。オーケストラがベルリン交響楽団、指揮はジェラルド・オスカンプという人です。この録音は1994年の4月に、ベルリンのシーメンス・ヴィラで行われたものです。元のレーベルはVERDI RECORDSという、まさに「死んだ」ところですが、1995年にはビクターエンタテインメントから国内盤もリリースされていました。これに先立つ1993年のセッションでは他の5曲も録音されており、それこそ「完全版」の全集として発売されています。ピアニスト、指揮者、そしてオーケストラが全て同じメンバーによる「6曲」の全集というのは、もしかしたら彼女のものが世界で初めてだったのかも。ですから、BRILLIANTも、少し前でしたらこちらの全集をそのまま使っていたところなのでしょうが、こんな贅沢なDECCAの音源が簡単に使えるというご時世になってしまっていたために、より知名度の高いアーティストでの全集が実現することになりました。
もちろん、この「ニ長調」を聴く限り、他の協奏曲の水準は到底DECCA盤には及ばないことがうかがえますから、それはありがたいことでした。ちなみに、この「ベルリン交響楽団」というのはザンデルリンクやインバルとの録音がたくさん残っている同じ名前の旧東ドイツの団体ではなく、1966年に旧西ベルリンに創設されたオーケストラです。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-01 20:08 | ピアノ | Comments(0)