おやぢの部屋2
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FASCH/Passio Jesu Christi
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Zoltán Megyesi(Ten), Péter Cser(Bas)
Mária Zádori(Sop)
Mary Térey-Smith/
Schola Cantorum Budapestiensis
Capella Savaria Baroque Orchestra
NAXOS/8.570326



バッハとほぼ同時代の作曲家、ヨーハン・フリードリッヒ・ファッシュの作った「受難オラトリオ」、「イエス・キリストの受難」です。同じようなタイトルの作品は、例えばサリエリミスリヴェチェクのものをここでご紹介したことがあります。ただ、あちらの一連のものは、もう少し時代が先のもの、そして、テキストとして用いられていたのはピエトロ・メタスタージオが1730年に書いたイタリア語の台本です。1717年から1719年の間に作られたとされるこの曲の場合は、1712年に出版されたバルトルト・ハインリッヒ・ブロッケスのドイツ語の台本によっています。蛇足ですが、いい加減さでは類を見ないこのレーベルの日本語タスキのコメントには「J・ブロッケス」とありました。こめんと(困った)ものです。
バッハの先達、シュッツあたりの頃は、「受難曲」と言えば聖書の福音書をそのままテキストにして、レシタティーヴォで歌い上げるという、殆ど「朗読劇」のようなスタイルでした。それが、バッハの作品などでは、その福音書の朗読に加えて、教会で歌われていたコラールや、新たに創作された歌詞によるアリアなども加わった「オラトリオ風受難曲」というものになっていました。しかし、この時代にはすでにこのバッハのスタイルも古いものとなっており、福音書のパートまでも自由に編集された「受難オラトリオ」というものが主流になっていたのです。そんな流れの産物であるブロッケスの台本は、そもそもその当時の4人の作曲家、カイザー、ヘンデル、テレマン、マッテゾンが競作するために書かれたものです。バッハすらも、1724年に「ヨハネ受難曲」を作った時には、歌詞の一部にブロッケスのものを使っています。
このファッシュの作品の場合は、作曲家によってテキストはかなり改変されています。テレマンの作品などはCD3枚分という長大なものなのですが、ここではわずか50分足らずで全曲が演奏されてしまうという、ある意味「聴きやすい」サイズとなっています。ブックレットにテキストは掲載されてはいませんが、「受難」のあらすじが頭に入ってさえいれば、おそらく何も見なくてもついて行けることでしょう。思い切り刈り込まれたレシタティーヴォはとりあえずスルーしても、馴染みのあるコラールや、とびっきり美しいアリアによって、この曲の魅力は十分に堪能出来るはずですよ。そう、なんと言っても3人のソリストによって代わる代わる歌われるアリアは、バッハの作品に親しんでいる人であればまさに「同時代の作曲家」として共感出来るものを、その中に見いだすことが出来ることでしょう。なにしろ、最初にソプラノによって歌われる「シオンの娘」という、バッハにはないキャラクターのアリアが、思い切りチャーミング、しかも、なぜかその次のアリアも全く同じメロディですから、その時点ですっかりお馴染みになっているはずです。これを歌っている人も、とても伸びやかな声で楽しめます。
その次に出てくるのが、バスによるイエスのアリアですが、これも「新しく発見されたバッハの曲」と言われても信じてしまうかもしれないほどの馴染みのある弦楽器のイントロで始まります。あいにく、歌手の人がちょっとお粗末で、半音進行などがグチャグチャになっていますが、曲自体の魅力が損なわれることはありません。最も安定した歌が楽しめるのは、エヴァンゲリスト役のテノールの人。第1部(この曲は2部構成です)の最後あたりで歌われる、フルートソロのオブリガートが入った曲は絶品です。
ただ、コラールを歌う合唱が、あまりにお粗末なのが玉に瑕。ここからもっとピュアな響きが聴けていたら言うことはなかったのですが。こちらで試聴が出来ますよ。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-03 23:21 | 合唱 | Comments(0)