おやぢの部屋2
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CHOPIN/Piano Concertos 1&2
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Dang Thai Son(Fp)
Frans Brüggen/
Orchestra of the 18th Century
NIFC/NIFCCD 004



レーベル名のNIFCというのは、ポーランド語でNarodowy Instytut Fryderyka Chopinaつまり「フレデリック・ショパン協会」という団体の略号です。なんでも、ここでは「リアル・ショパン」というコンセプトで、歴史的な楽器によるショパンの作品の演奏を体系的に録音して発表するという事業も推し進めているようで、このCDもその成果の一端となっています。レタリングだけのシンプルなジャケットも共通していて、なかなか壮観です。もちろんこの「協会」は、ショパンの故郷ポーランドのものですから、あちこちに見慣れないポーランド語が踊っているのも、ちょっとしたカルチャーショックになるのかもしれません。なにしろ、ショパンのファースト・ネームがあのようなスペルだったとは、今まで知りませんでしたから(「協会」の名前は、おそらく格変化でしょうか、語尾が変わっていますから、純粋な名前の表記は「Fryderyk Chopin」になります)。
カルチャーショックといえば、ショパンが「歴史的な楽器」、つまり「ピリオド楽器」での演奏の対象となっている、というのも、盲点をつかれた感じです。確かにショパンは19世紀前半の人ですから、例えばマーラーなどよりはずっと前の時代、マーラーで「ピリオド・アプローチ」が行われているのであれば、当然その対象になってもおかしくはないことなのですね。
そこで、まずソリストの楽器には1849年に作られたというエラールのピリオド・ピアノが用いられました。ネジや消しゴムは付いてはいませんが(それは「プリペアド・ピアノ」)。そして、オーケストラは、ブリュッヘンの指揮による18世紀オーケストラという、「ピリオド」界の雄の登場です。1番、2番、それぞれ2005年と2006年に開催された「ショパンと当時のヨーロッパ音楽祭」でのコンサートでのライブ録音となっています。
想像していた通り、イントロのオーケストラの響きも、そしてピアノの音も、今まで聞いてきた「ショパン」の響きとは全く異なるものでした。特に、フォルテピアノのもっさりとした音色と、ちょっとたどたどしいタッチは、あの輝かしいショパン・ブランドからは大きな隔たりのあるもの、これはかなりショッキングな体験です。音域は88健と現代のピアノと変わりませんが、ピッチは半音低く、弦の張力が弱い分、シャープさが無くなっているのでしょう。もちろん、アクションの構造も全然異なっているのでしょうし。しかし、次第に聴き進むうちに、これは他の楽器に関しての「モダン」と「ピリオド」の違いが、この楽器にも端的に表れていることが分かってきます。多くの聴衆を相手にするために、ひたすら遠くまで聞こえる音を追求してきた「モダン」楽器、その課程で失われてしまったものが、やはりピアノの場合もあったのではないか、というごく当たり前の感慨が湧いてきます。ショパンが曲を作ったのがこのような楽器だとすれば、今のスタインウェイから出てくる音は、まるで作曲者の意図が反映されていないものになってしまっているのではないか、と。
もっとも、ピアニストにしてもオーケストラにしても、そのような違和感はおそらくかなり強烈なものであったのは想像に難くありません。特に2005年の第1番の演奏では、ことさらその「違い」に対する戸惑いが、演奏に現れているような気がします。例えば、第2楽章の弦楽器などは、あくまでノンビブラートで押し切ろうとしている結果、表現そのものがなにか硬直したものになっているのではないでしょうか。
2006年の演奏になると、ある意味開き直りのようなものが感じられ、演奏そのものに余裕が出てきます。頑なにノンビブラートにこだわらずとも、必要ならばかければ良いではないか、という思いが、ショパンに関しては湧き起こってきたのかもしれません。第3楽章では、まるで「幻想交響曲」のようなコル・レーニョを聴かせているのは、そんな余裕ゆえのユーモアの発露なのでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-09 19:24 | ピアノ | Comments(0)