おやぢの部屋2
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MOZART/Gran Partita Arrangement for Strings
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Amati Ensemble
Salzburg Soloists
BRILLIANT/93696



「グラン・パルティータ」というのは、12の管楽器と1台のコントラバスのためのセレナーデです。コントラバスはコントラファゴットで代用されることもあるので、「13管楽器のための」とも言われますね。木管楽器のアンサンブル、いわゆる「ハルモニー」では、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットの4種類の管楽器がそれぞれ2本という「八重奏」が良くある編成なのですが、ここではそこに、現在では普通には使われなくなってしまった「バセットホルン」という、ホルンの偽物(それは、「ガセットホルン」)ではなく、クラリネットの一種である楽器が2本加わり、さらにホルンが4本に増強されています。そのような大きな楽器編成、中でもオーボエ、クラリネット、バセットホルンという3種類の異なる音色のメロディ楽器によるソロが、曲全体にヴァラエティを与えているのと、7楽章という長大な曲の構成によって、大きな世界の広がる作品になっています。
このCDは、イスラエル・フィルのファゴット奏者であるモルデハイ・レヒトマンという人が、ここで演奏しているアマティ・アンサンブルとザルツブルク・ソロイスツのために、弦楽器9人の編成に編曲したものです。その内訳はダブルの弦楽四重奏プラス、コントラバスということになります。
スピーカーで聴く限りは、二つのカルテットは、左右の端にヴァイオリン、真ん中にチェロという対象形の並びになっているようです。オリジナルの管楽器アンサンブルの場合は、やはり両端にオーボエとクラリネットが座っていて、それぞれに掛け合いの妙を披露するようになっていますから、それを弦楽器で模倣しよう、というプランなのでしょう。
そんな風に弦楽ノネットとして生まれ変わった「グラン・パルティータ」、そこからは、貴族のお館でパーティーかなにかの間に場を盛り上げる音楽、といった猥雑な感じは全く払拭されていました。すべてが均質な弦楽器の響きの中に集約されてしまった結果、とてもお上品な、「高貴」と言ってもいいような雰囲気が漂うようになっていたのです。それはそれで、刺激の少ない、心地よく味わえる音楽には仕上がっていますが、やはりオリジナルに親しんだ耳には、なにかが物足りません。それは、やはり発音原理の異なるさまざまの管楽器が織りなす綾、といったものが消え失せてしまったせいなのでしょう。まず、オーボエとクラリネットという対照的な音色のソロが交互に出てくる場面、確かにそれを担当する2人のヴァイオリニストはそれぞれの個性を出そうとはしているようには聞こえますが、決定的な違いとはなってはいません。しかも、まわりの弦楽器のトゥッティの中では、時としてソロでありながら全く聞こえてこないことすらもあるのです。
さらに、2番クラリネットの低音レジスターの独特の響きがしっかり耳に残ってしまっている音型や、ファゴットのちょっとおどけたような伴奏のパターン、そしてホルンが一体となって作り上げるパートソロの魅力といったような、オリジナルに親しんだ者であれば、ぜひ一緒に感じたいと思っている「小技」がすべて消えてしまっているのも、ちょっと悲しい感じです。
弦楽器だけの編成で無惨にものっぺらぼうになってしまった「グラン・パルティータ」を聴いてみて如実に分かったのは、モーツァルトが各々の管楽器のキャラクターをどれだけ熟知し、それを生かすためにどれだけ腐心していたか、ということです。そう、彼は、ここで決して他の楽器には置き換えることの出来ない完結された編成の音楽を作っていたのです。
最近の研究では、第6楽章の変奏曲は、ハ長調のフルート四重奏曲の第2楽章が使い回されたものだという今までの見解は覆され、フルート四重奏曲の方が後に出来たもの、しかもこれはモーツァルトの仕事ではなかったことが明らかになっているというのも、頷けるような気がしませんか?
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by jurassic_oyaji | 2008-06-11 20:18 | 室内楽 | Comments(0)