おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Sinfonie Nr.4(Urfassung 1874)
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Simone Young/
Philharmoniker Hamburg
OEHMS/OC 629(hybrid SACD)



2005年は、シモーネ・ヤングにとっては忘れられない年となったことでしょう。女性指揮者として初めてウィーン・フィルを指揮したのに続いて、ベルリン・フィルの指揮台にも立ったというのですからね。そして同じ年に、彼女はハンブルク国立歌劇場の総監督にも就任しています。ここのピットに入っているオーケストラはウィーン・フィルのように、「ハンブルク・フィル」の名前でコンサートのオーケストラとしても活躍していますから、もちろん彼女はその音楽監督も務めていることになります。
このコンビは、ブルックナーの交響曲の録音を進行中ですが、そこで彼女が選んだ楽譜は、すべて作曲家が最初に作ったもの、つまり「初稿」でした。だいぶ前にエリアフ・インバルが同じような全集を出していましたが、中には厳密には「初稿」とは言えないものもあったので、ここで彼女がどこまで徹底してくれるのか、楽しみに見守りたいところです。ところで、彼女は「初婚」なのでしょうか。
交響曲第4番で「初稿」にあたるのは、1874年に作られた「第1稿」です。この楽譜で演奏されたCDは他の曲の「初稿」に比べて極端に少なく、正規にリリースされたものはわずか5種類しかないはずです。200712月のコンサートでのこのライブ録音は、その最新のもの、そして、初めてのSACDとなりました。
ここで彼女は、オーケストラの弦楽器の配置にちょっとしたこだわりを見せていました。ヴァイオリンを、上手と下手に振り分ける「対向型」を採っているのですが、普通その場合は低弦が下手、ファースト・ヴァイオリンの後ろに来るはずのものを、標準的な配列である上手奥に持ってきているのです。従って下手からファースト・ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、セカンド・ヴァイオリン、そしてセカンドの後ろにコントラバスという、非常に珍しい並び方になっています。少なくとも、現在のオーケストラで、このようにヴィオラが下手側に居るということは、まずあり得ませんからね。
これが、このオーケストラとヤングが演奏するときの標準的な配置なのか、この曲に限ってのことなのかは、他の曲の演奏をまだ聴いていないので分かりませんが、この曲の場合、特に第2楽章では大きな威力を発揮することになります。左肩に楽器を乗せるという通常の構え方では、この位置にあるとf字孔が正面を向くことになり、その結果大きな音となって聴衆に伝わります。この楽章に幾度となく現れるヴィオラの長大なパートソロは、まさに圧倒的な力を持って響き渡っているのです。もちろん、ヴァイオリンを左右に分けたことも、お互いのパートの間の掛け合いやユニゾンの効果が、よりくっきりと伝わってくるものとなっています。これは他の楽章でも同じこと、ヴィオラの位置が変わったことにより、今まであまり感じることのなかった弦楽器の間の微妙なかけひきが、面白いように分かってきます。
この版による演奏が少ないのには、演奏が非常に難しいという理由があります。第2楽章の後半で延々と続くファースト・ヴァイオリンの超絶技巧や、フィナーレでのポリリズムなどはその一例です。ここでのヤングの演奏は、そのような一見前衛的な書法を敢えて目立たせず、全体の大きな流れを最優先させているように感じられます。そこからは、例えばこの曲に於いてはもっとも成功していると思われるギーレンの演奏のように、すべてのパートがきちんと聞こえてきたり、5拍子と4拍子の織りなすモアレがはっきり体験出来るというようなことはありません。その代わり、そこからわき上がってくるのは重厚で落ち着きのあるブルックナーの姿です。彼女の基本的なアプローチは、この「第1稿」を、作られたままの刺激的なものではなく、後に改訂が施されていくぶん丸くなった姿を反映させて演奏することだったのではないでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-13 22:39 | オーケストラ | Comments(0)