おやぢの部屋2
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ANDERSON/Orchestral Music Vol.2
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Leonard Slatkin/
BBC concert Orchestra
NAXOS/8.559356



このシリーズが目指しているものは、まさに「コンプリート・エディション」なのでしょう。第1集に続いてリリースされたこの第2集には今まで録音されたことのなかった曲が5曲も収められています。アンダーソン自身は「作らなかったことにしたい」と思っていたものを、遺族の承諾を得て今回晴れて録音出来た、ということなのだそうです。あのチェリビダッケのように、絶対にCDの販売を許さなかったものが、死んだ途端に膨大な録音が市場に流れ出すのと同じようなものなのでしょう。いくら作った本人が恥ずかしいと思っても、ファンとしては骨までしゃぶり尽くしたいと願っているもの、それを手助けするのがレーベルなのですから(NAXOSは禿鷹か!)。
そんな、初めて日の目を見た作品の一つが「Waltz Around the Scale」という曲です。アンダーソンという人は、初心者が簡単に演奏出来るような作品も良く作っていたのだそうですが、これもそんな学習者のアンサンブルを想定して書かれたものです。「Scale」というのは「音階」。初心者が毎日練習させられる音階を、これでもかというぐらいしつこく登場させるという、ちょっとマゾっ気の入ったものです。そんな下降音階の伴奏に乗って歌われるのが、お馴染みの甘~いメロディ。こんな素敵な曲をなぜボツにしたのでしょうね。同じように初心者のために作られた「Whistling Kettle」は、ヴァイオリンとヴィオラの合奏用。常に聞こえてくるヴァイオリンの高い音が、ヤカンのピーピーいう音なのでしょう。しかし、ちょっとこれは外したな、という感じはしますね。これはボツにして正解かも。
Lullaby of the Drums」という、やはり初めて録音された曲も傑作ですよ。有名な「トランペット吹きの子守唄」の太鼓判、いや太鼓版、しかし、容易に想像出来るように、スネアドラムやボンゴのにぎやかなリズムの中で眠りに誘われるわけなどあり得ません。これはアンダーソンお得意のジョークの精神が発揮された逸品ととらえるべきものでしょう。
ここでは「全集」と言うだけあって、アンダーソンのオリジナルの他に、彼が編曲した名曲なども聴くことが出来るようになっています。今回収録されているのは、ヘンデルのオペラアリアをトランペット・ソロとオーケストラに編曲したものと、クリスマス・キャロルを弦楽合奏のために編曲したものです。これらのものを聴いてみると、彼の編曲のセンスというものは極めてオーソドックスなスタイルを持っていることに改めて気づかされます。ですから、時にはそこからはなんの面白味も感じられないこともあるかもしれません。やはり、彼の最大の魅力はセンスとウィットに富んだそのオリジナル・メロディなのだ、と。
しかし、もしかしたら、そのように感じさせられてしまうのは、少なからずここで演奏しているスラトキンの責任なのではないか、とは言えないでしょうか。実際にアンダーソン自身が録音したものと比べてみると、スラトキンの演奏はあまりにお上品に聞こえてなりません。おそらく彼は、このシリーズのタイトルではありませんが「アメリカン・クラシックス」という概念、あくまでクラシック作曲家としてのアンダーソンを求めているのでしょう。
このアルバムの中には「Home Stretch」という、競馬場のイケイケの様子を描写した曲があります。自作自演では気にもとめなかったことなのですが、そのメイン・テーマは、なんと5拍子という不思議なリズムを持っています。本来、ちょっとしたアクセントとしての「5拍子」だったものが、スラトキンの手にかかると複雑な現代音楽のように聞こえてしまいます。せっかくの全集なのですから、ただのカタログには終わらない、アンダーソンならではの魅力を持ったものに仕上がって欲しいところですが、スラトキンには果たしてそれが出来るのでしょうか。そのあたりを、こちらで聴いてみて下さい。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-19 19:59 | オーケストラ | Comments(0)