おやぢの部屋2
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PUCCINI/The Complete Operas
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Various Artists
SONY BMG/88697295742



プッチーニは1858年の生まれですから、今年は生誕150周年にあたります。そこで、彼が作った10曲のオペラ(「三部作」を1曲と数えます)の20枚組の全曲ボックスが登場しました。価格は5千円ちょっと、この前のワーグナーのバイロイト全集と、1枚あたりの単価は同じようなものです。しかし、見た目はこちらの方がかなり立派、立方体の箱を開けると、中にはそれぞれのタイトルがオリジナルジャケットをデザインした厚手の紙ジャケットに収まっている、という仕掛けです。もっとも、ブックレットを重ねても厚さはそんなにありませんから、両端にスペーサーが入っている、というのが、ちょっとショボいところでしょうか。このスペースに対訳でも入れてくれれば嬉しいところですが、この値段でそれを望むのは、ちょっと欲張りでしょう。
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この紙ジャケ、表は元のジャケットですが裏はこのボックスのためのアール・ヌーヴォーっぽいデザインになっていて、なかなかおしゃれです。手にとって眺めているだけでも、プッチーニのゴージャスなサウンドが聞こえてくるよう。と、それぞれのジャケットの見開きを見ていると、そこには面白いものが写っていました。それは、プッチーニの自筆稿。それ自体は珍しいものではありませんが、そこでプッチーニが使っている五線紙に、思わず目を見開いてしまったのです。それは、オーケストラ用の20段以上ある五線紙なのですが、その左端に最初からパートと音部記号(と言うんでしたよね。ト音記号とかハ音記号というやつ)が印刷されているのですよ。最上段が「piccolo」ではなく「ottavino」となっていますから、これはまさにイタリアの出版社の表記、これがわざわざプッチーニのために特注されたものであることが分かります。原稿用紙にこだわった小説家のように、五線紙にもこだわったプッチーニの姿が、そこから垣間見えた思いでした。
オリジナルのレーベルはRCASONYという、かつてはオペラの全曲のスタジオ録音ではさまざまな名盤を輩出したところです。現在、その二つのレーベルは同じ会社に統合されて、晴れてこのような高い水準の全曲ボックスを出すことが可能になりました。もはや新しいオペラの録音など出来なくなってしまったそのレコード会社の、これは精一杯の罪滅ぼしなのでしょうか。二度と実現出来ないほどの豪華なキャストによる録音は、確かにぜひ手元に置いておきたいアーカイヴとなっています。
そんな中で、最も新しくリリースされた「トゥーランドット」は、1998年に、なんと北京の紫禁城というとんでもないところで上演されたもののライブ録音です。なにしろトイレがないのですから(それは「失禁城」)。映画監督のチャン・イーモウが演出を担当し、軍隊までも動員してスペクタクルなイヴェントを実現したこのプロダクションは、制作過程が映画にもなって紹介されていたものですね。そんな、録音するには条件が良いとは言えない場所での公演がどのように収録されているか、なかなか興味のわくところではないでしょうか。
それは、思いの外クリアな録音でした。おそらく会場ではオーケストラや歌手の声は生音だけではなくPAによって聴衆に届いていたのでしょうが、そのあたりのバランスがうまく取れています。2幕の頭あたりの繊細なオーケストラの響きも、野外での演奏という大味のものでは決してありませんでした。ですから、例えばタイトルロールのジョヴァンナ・カゾッラあたりが、本当はもっと楽に歌っても十分に声が届いていたものが、相当に力んでいるのが分かってしまいます。
これは、ですからそんな、制約の多い場所でのドキュメンタリーとして聴くべきものなのかもしれません。それにしても、こういう場でのメータの盛り上げ方はさすがです。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-21 21:47 | オペラ | Comments(0)