おやぢの部屋2
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BACH/Johannes-Passion
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Ruth Holten(Sop), Matthias Rexroth(CT)
Marcus Ullmann(Ten),
Gotthold Schwarz, Hentyk Böhm(Bas)
Georg Christoph Biller/
Thomanerchor Leipzig, Gewandhausorchester
RONDEAU/ROP4024/25



最近「生ヨハネ」を聴いたばかりなので、この新譜もよりリアリティを持って聴くことが出来ました。そのコンサート本体よりも、「プレトーク」ということでちょっとしたお話しがあったそちらの方に、なかなか教えられるものがあったものですから。そこで述べられていたのが、この「ヨハネ」の「稿」に関することでした。実際にこの曲には4つの稿が存在していることは知っていましたが、それらの成り立ちのようなものが、きちんと分かったような気がします。世の中、まだまだ知らないことだらけです。
快調にレコーディングを続けているビラーとトマス教会聖歌隊、前作の「マタイ」では、初期稿などという珍しいものを披露してくれましたが、ここでも版にはこだわっています。この曲の場合、普通になんの表記もなければ、「第1稿」に近いもので演奏されるものですが、ここでは、おそらくCDでは2度目の録音となる「第4稿」を使っているのですよ。ところが、その今まであった鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏(BIS/CD-921/922)にはしっかり「第4稿」という表記があったのですが、このビラー盤には稿についてはなんのコメントもありません。ライナーでも「オリジナル・バージョン(つまり第1稿)」と「1749年か、たぶん1750年のバージョン(つまり第4稿)」との違いには言及しているものの、これがそのどちらによって演奏されているものかということは、述べられてはいないのです。
ですから、普通に第1稿を演奏しているのだな、と思って聴いていると、最後のアリアである35番のソプラノの「Zerfliesse, mein Herze」で普通はフルートとオーボエ・ダ・カッチャ(モダンオーケストラではコール・アングレで代用)でオブリガートが演奏されるものが、ヴァイオリンがユニゾンでフルートのパートを一緒に弾いていたのです。これは、紛れもない第4稿のかたちです。そこで、最も分かりやすいチェックポイントであるアリアの歌詞を見直してみると、確かに部分的に全く別のものになっているものが2曲(9番と19番)見つかり、20番のテノールのアリアでは、まるまる別なものになっていました。せっかく珍しい稿で演奏しているのですから、しっかり「こうだ」とお断りを入れておいてくれればいいと思うのですが、どうでしょう。
ただ、この「第4稿」の歌詞は、さっきのプレトークで、市議会からの外圧によって変更させられた可能性が大きいものだ、と知ったばかりであれば、これが必ずしもバッハの意志を伝えるものではなかったと思えるのは自然なことです。実際、新バッハ全集の楽譜でも、第1稿の歌詞を採用していますし。「マタイ」の初期稿といい、今回の「第4稿」といい、資料としては珍しくても実際にはそれほどの価値のない楽譜を使って演奏するというのが、ビラーたちの信念なのでしょうか。この際ですから、まだ誰もやっていないはずの、もっと大幅なカットがなされている「第3稿」の初録音を、ぜひやってもらいたいものです。
演奏自体は、稿の選択にかかわらず、非常に引き締まった素晴らしいものです。やはり合唱は的確にこの曲での合唱の役割を、しっかり把握してくれていて、ドラマティックな部分は身の引き締まる思い、コラールでさえ、歌詞の意味がしっかり伝わってくる生々しさがありました。
アルトのソロのレクスロートは男声ですが、有名な30番のアリア「Es ist vollbracht」は絶品、後半のメリスマも、男声ならではの安定感があって、胸のすくおもいです。エヴァンゲリストとアリアを掛け持ちのウルマンは、いつもながらの柔らかい声が魅力的ですが、後半はさすがにバテてきたようですね。そう、これはトマス教会でのライブ録音。なんといっても歌い終わった後の、教会全体の空気が感じられるような残響が、素敵です。
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by jurassic_oyaji | 2008-06-27 20:50 | 合唱 | Comments(0)