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Best of the King's Singers
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The King's Singers
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今年は1968年に結成されたとされる(その前身は、1965年から活動していました)「キングズ・シンガーズ」の40周年だそうです。現在までに80枚以上(!)のアルバムをリリースしている彼らですが、所属していたレーベルは多岐にわたっています。ただ、単発的にTELARC(ビートルズ)SONY(リゲティ)からアルバムを出したりしてはいますが、大まかにはデビューから1980年台までのEMI時代、1990年台のRCA時代、そして現在のSIGNUM時代と、一応の区切りをつけることは出来るのではないでしょうか。しかし、初期のEMIのものは、日本での国内盤はなぜかビクターが販売していたため、RCAの「ニッパー」マークが付いていたりしたのですから、混乱してしまいます。
以前EMIから出たベストアルバムをご紹介したことがありましたが、今回の「ベスト盤」は、RCA時代のものです。ただ、コンピレーションではなく、オリジナルアルバムをそのまま5枚組のボックスとしてひとまとめにしたパッケージになっています。一見復刻盤のようですが、現物はオリジナルそのもの、つまり、倉庫に残っていた在庫品をもう1度「新譜」として販売しようという魂胆なのでしょう。言ってみれば、スーパーで売れ残った生鮮食料品をパックし直して、賞味期限を改竄して店頭に並べるのと同じことなのでしょうね。ま、CDの場合腐ったりはしませんから、別に「違法」ではありませんがね。お安くもなっていますし。
ここに「パック」されているアルバムは、1992年から1997年にかけてリリースされたものです。デビュー当初こそ夢中になって追いかけていたものですが、この少し前あたりから、このグループに対する熱は完全に冷めていました。レパートリーがあまりにも安易になりすぎていたのと、テナーのメンバーがボブ(ロバート)・チルコットという、最悪な人に代わってしまったことが、その原因です。このチルコットという人、かつてはボーイ・ソプラノとして名声を博し、フォーレのレクイエムでソロを歌ったアルバムなども出ていたはずです。しかし、「大人」になってしまったら、彼はごく普通の歌手以上にはなれませんでした(腰を痛めて、「コルセット」が欠かせなかったとか)。ただ、彼は歌うことでは成功しなかったものの、編曲の才能には秀でたものがあり、このグループにも多くの編曲を提供していますし、その楽譜は今では日本のアマチュア合唱団のレパートリーにさえなっています。
そんなわけで、決してリアルタイムで接することのなかったこの5枚のアルバムを聴いてみると、そこにはそんなチルコットの「弊害」が見事に反映されているのが分かってしまいます。彼らの原点であるルネッサンスの音楽でさえ、ジョスカン・デ・プレの作品を歌った1993年の「Renaissance」というアルバムでは、彼一人のためにかつての美しいハーモニーは無惨にも崩れ去っていました。さらに、おそらく彼がアルバム・コンセプトにまで関わったであろう1997年の「Spirit Voices」などは、多くのゲスト・ヴォーカルを迎えた結果、もはやグループとしての基盤すら危うくなっているほどの、先の見えない不安定な状況が感じられてしまう駄作になっています。
この年に、テナーパートはチルコットからポール・フェニックスという人にメンバー・チェンジがなされます。フェニックスは特別な個性こそありませんが、決して「邪魔」はしない人、グループの危機は乗り越えられました。
The Golden Age
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SIGNUM/SIGCD119


それから10年、これは彼らの最新作です。「黄金時代」と呼ばれた16世紀のポルトガル、スペイン、メキシコの音楽、彼らもまた往年の輝きを取り戻した「黄金時代」を迎えていることを感じないわけにはいかない素晴らしいアルバムです。アロンソ・ロボの「エレミアの哀歌」での落ち着いたたたずまいには、心を打たれます。やはり、この真摯さがなければどんなレパートリーを歌ったところで、心に響くことはないでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2008-07-03 20:24 | 合唱 | Comments(0)