おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Mass in E Minor, Motets
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble Stuttgart
Mitglieder des RSO Stuttgart
HÄNSSLER/SACD 93.199(hybrid SACD)



ブルックナーの、合唱とブラスバンドのためのミサ曲と、モテットを何曲か収録したアルバムです。ついこの間、レイトンとポリフォニーというコンビの演奏で同じようなカップリングのCDを聴いたような気がします。ほんの少し前までは、こんな風な交響曲以外でのブルックナーの録音などはかなり珍しいものだったのが、ウソのよう、素晴らしい時代になったものです。
もっとも、それはあくまでも「クラシック・ファン」という範疇での話です。世の中には「合唱の世界」というものがあり、そこには「クラシック」とは微妙に異なる嗜好が存在しているのだ、ということも、折に触れて実感出来ることになります。例えば、そんな「合唱の世界」での出来事、たくさんの合唱団が集まったパーティーで、名刺代わりに各々の「愛唱曲」のようなものを披露する、といった場面で、さる合唱団がいともさりげなく「Locus iste」を暗譜で歌ってくれたりすることが現実にあり得るのですからね。そこには何十年か前に在籍したことがあるという「OB」もいたのですが、彼らももちろん暗譜、別にブルックナーなどとは意識しないで、代々歌い継がれてきた「名曲」という受け取り方で演奏していたのでしょう。確かに、そんな匿名性を持ちうるような親しみやすさが、ブルックナーのモテットの中には存在しています。
今回のシュトゥットガルト・ヴォーカル・アンサンブルの演奏には、そんな仲間うちでの親密なハーモニーを、非常に高い次元で磨き上げた、というような印象がありました。特に男声パートの、アンサンブルの中にしっかりとけ込んだ音色と歌い方には、とことん全体に奉仕しようという意気込みが強く感じられます。例えば、七声の「アヴェ・マリア」で、最初に女声だけで歌われた後に男声だけで入ってくるところなどは、それまでに女声が造り上げていた世界を決して変えることがないような柔らかい音色の配慮が、とても好ましいものに思えてきます。
ただ、その分、パート独自の主張といったものは、若干背後に隠れることにはなってしまいます。まあ、このような曲の場合は、むしろそのぐらいの方が心地よく聴くことが出来るのかもしれません。
しかし、「ミサ曲」のように、伴奏にブラスバンドという強力な音響の持ち主が加わってくると、そんなことも言ってはいられなくなります。無伴奏で始まる「Kyrie」、合唱だけの時にはそれは深みのあるしっとりとした響きが堪能出来るものが、そこに金管楽器が入ってくると、全く別の世界に変わってしまうのです。そこでの主役はトロンボーンやホルン、合唱は陰の方で小さくなってしまっています。これは、先日のレイトンたちが、管楽器に負けぬほどの主張を堂々と繰り広げていたのとは全く対照的なアプローチに感じられてしまいます。この録音はライブではなく、教会で行われたセッションによるものです。バランスはエンジニアの手でどのようにでも変えられるはずですから、こんな極端に合唱を無視したような扱いではセンスを疑われても仕方がありませんす
そのような居心地の悪さは、最後までぬぐい去ることは出来ません。「Credo」の「Crucifixus」のように、殆ど例外的のように合唱と柔らかい金管とがえもいわれぬ至福の世界を醸し出している場面もあるにはあるのですが、その直後の「Et resurrexit」でいともノーテンキなクラリネットの刻みが入ってくると、それもぶちこわしになってしまうという絶望感に、何度遭遇したことでしょう。
このSACDでは、ミサ曲が終わった後に無伴奏の「Pange lingua」が歌われるという構成になっています。それを聴くことによって、さっきまでのブラバンの伴奏がいかに邪魔なものであったかが再確認出来るのですから、皮肉なものです。
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by jurassic_oyaji | 2008-07-05 22:28 | 合唱 | Comments(0)