おやぢの部屋2
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NAUMANN/La Passione di Gesú Cristo
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櫻田亮, Raffaele Giordani(Ten)
Monica Bragadin(MS), Alfredo Grandini(Bas)
Sergio Balestracci/
Coro La Stagione Armonica
Orchestra di Padova d del Veneto
CPO/777 365-2



ヨーハン・ゴットリープ・ナウマンは、1741年に生まれ、1801年に亡くなったドイツの作曲家です。彼の生涯には、モーツァルトの生涯がまるまる収まるということになりますね。生まれたのはドレスデン近郊、亡くなったのもドレスデンですが、モーツァルト同様小さな頃から音楽の才能を発揮、10代のころからヨーロッパ各地を旅して歩き、18才の時にパドヴァでタルティーニの生徒となり、本場イタリアの音楽をみっちり学ぶことになります。1763年、22才の時には、ヴェニスで最初のオペラを発表、オペラ作曲家として華々しいデビューを飾ります。翌1764年には、アドルフ・ハッセなどの推薦で、ドレスデン宮廷の作曲家に就任しますが(1776年には宮廷楽長に「出世」)、その後もイタリアをたびたび訪れます。
1765年に、パドヴァで、やはりハッセの推薦によって委嘱を受けたのが、1730年に作られたピエトロ・メタスタージオのイタリア語の台本によるオラトリオ、「イエス・キリストの受難」でした。当時の超売れっ子オペラ台本作家によるこの受難オラトリオは多くの作曲家による作品が残っており、18世紀のこのジャンルの音楽の一つの潮流を形づくっているものです。そのなかで、このナウマンのものはそのかなり早い段階での作品、文献にはたびたび登場しているものですが、今回の世界初録音によって、やっとその現物の音を聴くことが出来るようになりました。
イエスを「否認」したピエトロ(ペテロ)のところに、磔の現場を見てきたジョヴァンニ(ヨハネ)、マッダレーナ(マグダラのマリア)、ジュゼッペ(アリマテアのヨゼフ)の3人がやってきて、その模様を語り合うという、かなりオペラティックな設定は、この作品に於いても充分に生かされています。イタリアで長年修行してきただけあって、ナウマンの正調イタリア・オペラ、つまり「オペラ・セリア」のスキルは、まさに熟達の境地に達しています。その結果、この作品は、我々が聴くとテーマである「受難」からは少し離れた、いささか明るすぎる曲調がかなり目立ってしまうように感じられるかもしれません。おそらく、それはドイツの作曲家にはつい厳格さを求めてしまうという我々の悪弊のせいなのでしょう。この当時の人にとってみれば、これはまさに時代の様式にしっかり則った音楽、なんの違和感もなかったはずでしょうからね。それは、モーツァルトにも通じる明るさであると同時に、エマニュエル・バッハあたりからの「伝統」にもしっかり根ざした様式だと感じられたはずです。
全曲演奏するとちょうど2時間という、しっかり作り込まれた音楽は、華麗なダ・カーポ・アリアに彩られています。中でも、2曲設けられた、オブリガート付きのアリアがひときわ目をひきます。第1部のマッダレーナ(メゾソプラノ)のアリアは、ヴァイオリン・ソロ、第2部のピエトロ(テノール)のアリアはファゴット・ソロ、いずれも10分を超す大曲で、楽器がまるで協奏曲のように振る舞っているのが聴きどころでしょう。歌手と楽器が、それぞれカデンツァを披露しているというのが、スリリング。
曲の間にざわめきが聞こえてくるというライブ録音ですが、このオリジナル楽器のオーケストラは、かなり高い水準の演奏を、最後まで緊張感をもって繰り広げています。声楽陣では序曲の後すぐ登場するピエトロ役の櫻田さんが大活躍です。BCJで何度か聴いたことのある端正なソロが、ここではさらに磨きがかかって、「凄さ」さえ感じられるような素晴らしいものになっています。4人のソリストの中では間違いなく最高のランク、彼のソロアルバムといっても良いぐらい、それは充実した演奏を聴かせてくれています。ペーター・シュライアーを超えた、といったら言い過ぎでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-07-11 19:57 | 合唱 | Comments(0)