おやぢの部屋2
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To Pan and Syrinx
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Kenneth Smith(Fl)
Paul Rhodes(Pf)
DIVINE ART/dda25066



フルーティストのケネス・スミスのアルバム、けねす(けなす)わけではありませんが、以前新譜としてリリースされたものを聴いてみたら、録音は10年以上昔のものだったのでちょっとがっかりしたことがありましたね。今回も、ジャケットを見る限りリリースは2008年ですが、表側だけではいつ録音されたものなのかは全く分からないという、不親切なパッケージでした。しかし、一応彼の演奏では聴いたことのない曲ばかりだったのでとりあえず買ってみて、後は運に任せる、という手を取ることにしました。
家へ帰って(これは、新宿のフルートやさんで買いました)開けてみたら、録音は前のアルバムと同じ1996年のものに混ざって、2006年録音という新しいものも3曲入っていたので、まずは一安心です。
入っている曲は全部で6曲。メラニー・ボニという女性の作曲家の作品だけは聴いたことがないものですが、あとはマルティヌー、ルーセル、エネスコ、ドビュッシー、そしてシューベルトの、フルート曲としては一番有名な曲ばかりが集まっていました。
まずは、マルティヌーのソナタです。これは新しい録音。会場が今までとは別な場所なので、ちょっと音全体が拡散しているようで、慣れるまでに時間がかかります。もうすでに60歳前後のはずですが、テクニックや音程には全く衰えは感じられません。ただ、幾分ビブラートが深くなっているかな、ぐらいの印象でした。
しかし、次のルーセルの「笛吹きたち」と、エネスコの「カンタービレとプレスト」で、10年前の音を聴くと、やはりこちらの方が明らかに勢いはあります。なによりも、音楽の作り方が自信に満ちています。エネスコの前半の、余裕を持ったルバートなど本当に気持ちのよいものです。やはり、これに比べると、最近のものはなにか「守り」に入っているという印象は免れません。
次は、初体験のボニのソナタを新録音で。4楽章から成る堂々たる構成ですが、それぞれの楽章を特徴づけているテーマがそれぞれキャラが立っていて、とても魅力的な作品です。終楽章など、サン・サーンスの匂いもしていますね。これは、スミスの演奏で初めて聴けたことに感謝したくなるような、とてもていねいでいて、なおかつパッションに満ちた演奏でした。
ドビュッシーも、新録音で「シランクス」です。決してベタベタしない、スマートな彼のスタイルは健在です。そして、驚かされるのは相変わらずのブレスの長さです。最後の終わり方が、なかなかしゃれていますよ。
最後のシューベルトは、もちろん「しぼめる花」。昔の録音で締めくくった意味がよく分かる、これはものすごい演奏です。まず、序奏に現れる低音の豊かさには、圧倒されてしまいます。やはり、この頃の低音の凄さは、もう今の彼にはなくなっているような気がしますね。そして、ブレスは驚異的、なにしろ、第1変奏では、普通の人の倍の長さのフレーズを一息で吹いているのですからね。もちろん、ベザリーのような「ずるっこ」はなし、しっとりとした第3変奏では、しっかり気持ちのこもった「息」で、まさに「息の長い」たっぷりした歌を紡いでくれています。もちろん、テクニックも完璧。後半の細かい音符が続く難所も全く危なげなくクリアです。というより、音の難しさを全く感じさせない中で、余裕を持って流麗な音楽を作り上げているのですから、聴いていて嬉しくなってしまいます。
たしかに、往年の「凄さ」こそは薄れてきましたが、まだまだ現役で頑張れる人です。なにより、音程感の確かさは、誰とは言いませんが、バリバリの若手を遙かに凌ぐものがあります。最近、彼の在籍しているオーケストラでは、首席奏者を2人に増やしたそうですから体力的には余裕、まだまだ活躍してくれることでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2008-07-15 23:21 | フルート | Comments(0)