おやぢの部屋2
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BONIS/Romantic Flute Music
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Tatjana Ruhland(Fl)
Florian Wiek(Pf)
Mitglieder des Radio-Sinfonieorchesters
Stuttgart des SWR
HÄNSSLER/CD 93.204



メラニー・ボニという作曲家の名前は、この前のケネス・スミスのアルバムの時に初めて耳にしたものです。お魚みたい(それは「ポニョ」)。あの時に聴いたフルート・ソナタがなかなか素敵な曲だと思って、彼女の名前が頭の中に残ってまだ消えないうちに、こんな、彼女のフルートを含む室内楽だけを集めたアルバムが出るなんて。
彼女の生涯は、まるでドラマのように波乱に満ちたものでした。彼女は1858年にフランスのプチ・ブルの家に生まれましたが、両親は全く音楽には無関心、彼女はお針子にでもなるようにしつけられます。そんな中で、知人の薦めで独学でピアノの勉強を始め、それがセザール・フランクの目にとまって、ついにはパリ音楽院に入学することになるのです。そこで彼女の才能は花開くのですが、1881年に音楽院での仲間であったアメデー・ランドリー・エティシュと恋に落ちてしまったから、いけません。怒り狂った両親はメラニーを退学させ、20歳以上も年上のバツイチの資産家アルベール・ドマンジュと結婚させてしまうのです。それからは、彼女は音楽からは離れ、メラニー・ドマンジュとして、夫の5人の連れ子と、自分自身の4人の子供の世話を見るという生活を強いられることになります。
しかし、その4人の子供のうちの1899年に生まれた最後の女の子は、実は元カレのエティッシュとの子供でした。不倫、ってやつですね。二人の間の愛の炎は、まだ消えてはいなかったのです。しかし、彼女はこのことで大きな罪悪感を抱くようになり、結局二人の関係が長続きすることはありませんでした。
1900年台に入って彼女は「メル・ボニ」というペンネームで創作活動を再開、300曲あまりの作品を残し、リュドゥック社などから出版もされます。それらのいくつかは当時の一流の音楽家たちによって演奏され、彼女の作曲家としての地位は確固たるものになったかに見えました。しかし、現実には彼女の死後はその作品は完全に忘れ去られ、それが再評価されるようになったのはごく最近のことなのです。
以前、ケックランの珍しい作品を紹介してくれたシュトゥットガルト放送交響楽団の首席フルート奏者タチアナ・ルーラントは、ここでも今まで顧みられることのなかった知られざる名曲を発掘してくれました。ここではさらに、「女性だから」ということでまわりから理解されない中で自らの芸術を造り上げたこの作曲家への共感も加わって、なかなか気迫に満ちた仕上がりとなっています。なんせ、9曲の収録曲のうち、5曲までが世界初録音なのですからね。
ボニの作風は、アルバムのタイトルにもあるようにフランクの流れをくむロマンティックなものがベースになっています。しかし、そこには同時代のドビュッシーなどに見られる斬新な和声や異国趣味なども垣間見ることが出来るでしょう。フルートの作品に限ってみれば、あのフィリップ・ゴーベールのようなテイストが、かなりの部分で感じられるはずです。
そんな中で、彼女だけにしか見られない特徴は、直接的に胸をえぐるようなセンチメンタリズムの発露が感じられるメロディ・ラインではないでしょうか。それは、最初のトラック、初録音の「組曲」の1曲目「セレナード」で、まず聴き取ることが出来ることでしょう。
「古いスタイルによる組曲」という、やはり初録音の作品も、なかなか興味深い特徴を持っています。2曲目の「フゲッタ」などは、いかにもバロック風のフーガ仕立てですが、その主題の後半に不似合いなシンコペーションが入るあたりがとってもユニーク。次の「コラール」も、まるでバッハのような音楽です。
ルーラントの演奏は、確かに共感には満ちているものの、なぜかあまり訴えかけてくるものがないのはなぜなのでしょう。ケネス・スミスを聴いたときには確かに感じられた深いメッセージが、ここではなにか表面的なものしか伝わってこないような気がします。
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by jurassic_oyaji | 2008-08-06 20:21 | フルート | Comments(0)