おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Don Diovanni
c0039487_20114397.jpg
Pietro Spagnoli(Don Giovanni) José Fardilha(Leporello)
Mario Luperi(Commendatore)
M. Papatanasiu(Donna Anna) M. Reijans(Don Ottavio)
Charlotte Margiono(Dona Elvira)
Jossi Wieler, Sergio Morabito(Dir)
Ingo Metzmacher/
Chorus of De Nederlandse Opera
Netherlands Chamber Orchestra
OPUS ARTE/OA 3020B D



ヴィーラーとモラビトの演出による「ダ・ポンテ三部作」、この「ドン・ジョヴァンニ」では、設定を読みかえるだけではなく、ドラマの構造そのものを解体するという冒険(暴挙とも言う)に挑んでいます。ステージ上に並んでいるのは夥しい数のダブルベッド、一見家具屋さんの寝具コーナーのように思えてしまいますが、序曲の間それぞれのベッドの上には熟睡している人がしっかり横たわっているので、それはないだろうということになります。しかも、一つのベッドのコーナーだけがやたらマニアックな設定、昔の8㎜フィルムや、プロジェクター、編集機などが棚に並んでいます。同じ棚には、それこそ「ドン・ジョヴァンニ」の写真(カラヤン盤のジャケットにある、サミュエル・レイミーのコスプレ写真)まで飾ってあるのですから、これは家具屋さんではあり得ません。おそらく、これはそこに横たわっている人たちのそれぞれの寝室を、時空を超えて集めたものなのでしょう。もちろん、こんなオタクっぽいコーナーはレポレッロの寝室に決まってます。8㎜フィルムのコレクションは、ポルノ、そして戸棚の中には、なんと写真そっくりの「ドン・ジョヴァンニ着ぐるみ」が入っているではありませんか。これは、後にドン・ジョヴァンニとレポレッロが入れ替わってドンナ・エルヴィラを騙すシーンで実際に用いられるという、「実用的」な効果も持っているのですが、こんなアブナイものをクリーニングに出して後生大事にしまっておく、というのは、レポレッロの変身願望の象徴、というのが、演出家の意図なのかもしれませんね。
ですから、結婚式の衣装のまま、真っ白な可愛らしいベッドに寝ているツェルリーナとマゼットの願望は、初々しくつつましい新婚生活を送ることだったのでしょうか。もちろん、そんな願望が叶うはずもなく、ツェルリーナの純白のウェディング・ドレスは、ドン・ジョヴァンニの「暴行」によって、真っ赤な血で汚されてしまうことになるのですがね。
そんなふうに、これらの「寝室」はそれぞれのキャラクターの潜在意識が象徴されるかのような様子を見せています。そんな中で、1人眠ることが出来なくて歩き回っているのが騎士長。「フィガロ」ではとんでもない音程で1人音楽的に足を引っ張っていたバルトロを演じていた人ですが、そんな重苦しい音程がここでは逆に深刻さを良く出していますから、こちらの方がハマリ役なのでしょう。この騎士長の出番は極端に少ないので、最初に出てきて「死んだ」あとには、本当に死んだようにベッドの上で寝ています。この人のヘッドが、まるでダースベーダーのように見えてしまうのはかなりブキミ。ちなみに、この騎士長のベッドだけが、第2幕になると半分床に沈んで斜めになっています。それは、果たしてどんな意味を持っているのでしょうか。
おそらく、そんな一つ一つのセットや歌い手の動きには、演出家としてはきちんとした意味を持たせたつもりなのでしょう。そして、その意味を深く詮索し、理解するのは、今時のオペラ愛好家にとっては必要不可欠なスキルなのかもしれませんし、それが最先端の流行であるのは良く分かります。しかし、正直これだけ独りよがりで見当違いのことを堂々とやられると、そんな努力が果たして意味のあることなのか、少々疑問になってはきませんか?
そんな、夢とも現実ともつかないようなプロットを原作に馴染ませるために、ここではレシタティーヴォのいくつかがカットされています。そのいかにも中途半端な措置は、なまじ普通にやられている部分があるだけ違和感が募ります。ここまで「読みかえ」を行ったのであれば、それこそその道での古典、ノイエンフェルスの「こうもり」ぐらいの大鉈を振るわないことには、目の肥えた聴衆を満足させることなど出来ませんよ。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2008-08-12 20:14 | オペラ | Comments(0)