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BACH/Choralfantasie BWV1128, Die Kunst der Fuge
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Gerhard Weinberger(Org)
CPO/777 403-2



分かりにくいかもしれませんが、このジャケットの右下には「ヨハン・セバスティアン・バッハの新作 New work by J. S. Bach」というシールが貼ってあります。亡くなってから250年以上経っているのにまだ「新作」を発表出来るのですからすごいものです。もちろん、これは「新しく作られた」曲であるわけはなく、「新しく発見された曲」ということになるのですがね。実は、このオルガンのためのコラール・ファンタジー「主なる神、われらを守りたまわずばWo Gott der Herr nicht bei uns halt」は、今年2008年の3月にオークションに出品された写筆譜が、バッハが作った音楽をコピーしたものに間違いないということになって、晴れて新しくバッハ作品番号BWV1128が与えらることにばっはものなのです。
この写筆譜は、バッハの自筆稿ではなく、19世紀の旧バッハ全集の編纂にあたっていたヴィルヘルム・ルストという人が、おそらくバッハのものであろうという楽譜を写譜したもので、当初は全集にも入れるはずのものだったのが、他の編集員が真作とは認めず、結局BWVでも「付録2(偽作の疑いがあるもの)」というカテゴリーに収録されることになってしまいました。ですから、曲自体は以前から知られていたものであり、今回のオークションでたまたまルストの遺品の中にあった彼の写筆譜と、その元ネタの由来が記されたものを元に再調査を行った結果、「真作」であると認められたというだけのものなのです。したがって、この曲はもちろん「新作」ではありませんし、「新発見」ですらないことになります。
それでも、「新発見」の報を受けて楽譜は直ちに出版され、5月にはバッハのオルガン曲全集録音のプロジェクトを進行中のワインベルガーによって、「最後の」作品であり、かつては最後の作品番号(BWV1080)でもあった「フーガの技法」の余白に録音されたのです。なんという早業なのでしょう。もちろんCD発売にあたっては、「世界初録音」という意味を込めて、さっきのようなシールを貼ることも忘れてはいません。ただ、正確には、もっと早く録音してCDを出したオルガニストがいたそうですので、これが「世界初録音」であるのもちょっと疑わしい気がしますが、「発見」されてから2ヶ月後には録音、4ヶ月後にはCDがリリースされていた、というのはすごいことではないでしょうか。それだけ、情報が世界を巡る時間が短くなったのでしょうね。
ただ、それがあまりに早過ぎると、逆に流行を追っているみたいでちょっと白けてしまうことはありませんか?正直、この前の「新曲」であるBWV1127(ソプラノのアリアでしたっけ)の時でも、大騒ぎして録音はされたものの、別にどうというものでもなかったような気がしてなりません。今回も「抱き合わせ」が大曲の「フーガの技法」ですから、当然2枚組、この曲だけを目当てに買うには、ちょっと勇気のいるパッケージです。それとも、「バッハの新曲」だったら、このぐらいの値段でも買う人がいるだろうというのがレーベルの目論見なのでしょうか。
確かに、初めて耳にするこの6分ちょっとのコラール・ファンタジーは、新鮮な息吹を与えてくれるものでした。しかし、だからといって、それはバッハの今まで知られている膨大なオルガン作品の中の1曲と何ら変わるものではありません。「初録音」などという大げさな扱いを受けずに、何かの折りに他の同じような曲を一緒に演奏されたものを聴いた方が、どれだけ自然に感じられることでしょうか。
カップリングの(とは言っても、当初はこちらがメインだったはず)「フーガの技法」は、この曲に与えられた厳格な対位法の集大成という「堅苦しい」イメージを振り払ってくれるような、とてもイマジネーションの豊かな演奏です。ポリフォニーの間から、バッハのリリカルな面、そう、あの美しいアリアなどのテイストが垣間見えてくるようで、とても幸せな気分に浸れるものでした。こんな「おまけ」が付かなくても、充分楽しめるCDなのに。
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by jurassic_oyaji | 2008-08-14 20:01 | オルガン | Comments(0)