おやぢの部屋2
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REINECKE/Von der Wiege bis zum Grabe
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Fenwick Smith(Fl)
Hugh Hinton(Pf)
Members of the Boston Symphony Orchestra
NAXOS/8.570777



メンデルスゾーンの後を継いでライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者も務めたドイツの作曲家カール・ライネッケは、1824年といいますから、ちょうどシューマン(1810年)とブラームス(1833年)の生年の間に生まれたことになります。フルートのためのソナタと協奏曲、そして、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲のカデンツァなどは広く知られていますが、他の曲なんかアッタッケ、というぐらい、マイナーな作曲家です。もちろん、実際はあらゆる分野で多くの作品を残している人なのですが。
このCDはタイトルにある「揺りかごから墓場まで」という曲集と、2つの管楽器だけのアンサンブルの、世界初録音盤になります。とは言ってもこのNAXOS盤の新譜は初出ではなく、以前1993年にETCETERAレーベルから出たもののリイシューです。
「揺りかごから墓場まで」というのは、私たちの国には全く縁のない、行き届いた福祉政策を指し示す言葉として知られていますが、このライネッケのピアノ曲集の場合は、人の一生を16曲の小品で描いたものという意味で付けられたタイトルなのでしょう。その中から8曲を選んで、フルートとピアノのために編曲をしたのが、エルネスト・ケーラーでした。そう、フルーティストを目指す人は必ず勉強することになる、あの多くの練習曲を作った「ケーラー」です。お世話になった方も多いことでしょうね。この作品での、まるで最初からフルートのために作られたようなその編曲はなかなか素敵です。曲集自体はそれぞれに分かりやすい表題が付いているほんの2分か3分の曲が集まったもの、おそらく意識的にシューマンあたりのテイストを借用しているのでしょう、それぞれの曲は愛に満ちたまなざしで彩られています。
中でも、3曲目の「おお、美しき五月の夜よ」の、流れるように美しい旋律はひときわロマンティックな情感にあふれたものです。原曲のピアノソロは聴いたことがありませんが、このメロディがフルートによって演奏されることによって、その魅力はさらに大きなものとなっているのではないでしょうか。これを吹いているフェンウィック・スミスの密度の高い音色は、その魅力を十二分に伝えてくれています。
最後の「夕日」という曲も、もちろん人生の最後のメタファーなのでしょうが、なにか晴れ晴れとした面持ちが心を打つものです。
室内楽作品としては、まず二本ずつのクラリネット、ホルン、ファゴットにフルートとオーボエという編成の「八重奏曲」が収録されています。この編成、モーツァルトの時代のセレナーデなどによく用いられた形によく似ていますが、ソプラノパートがオーボエ2本ではなくオーボエとフルートというのがユニークなところです。この二つの楽器があるときは重なりあるときはソロとなるという、ロマン派以降のオーケストラの木管パートの縮図のようなものが、よく現れている編成です。さらに、2本のホルンによる深いハーモニーは、曲全体に重量感のある響きを与えています。第2楽章のスケルツォ主題のリズム的なおもしろさ、最後の楽章の十六分音符の掛け合いの妙、そしてそれらに挟まれたアダージョ楽章のカンタービレと、魅力は尽きません。
その13年後に作られたのが「六重奏曲」です。ふつうの木管五重奏にホルンをもう1本加えたという変わった編成になっています。ただ、このホルンは、先ほどの曲のような厚い響きではなく、個別の声部としての役割が与えられているような気がします。しかし、この曲では「八重奏曲」ではストレートに伝わってきたパトスが、なにかに邪魔をされているような気がしてなりません。まるで、ちょっとした作為の跡のようなもの、素直な情感を表に出すことが恥ずかしいと思われる時代の、それは前触れのように聞こえます。
そのあたりを、こちらで確かめられてはいかがでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-08-18 20:21 | フルート | Comments(0)