おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Requiem
c0039487_20454851.jpg
Agnès Giebel(Sop), Vera Soukoupova(Alt)
Georg Jelden(Ten), Heinz Rehfuss(Bas)
Karel Ancerl/
Czech Chorus
Prague Philharmonic Orchestra
TAHRA/TAH 660



チェコの名指揮者カレル・アンチェルは、今年生誕100年を迎えます(「アンチエージ」の甲斐なく、もう亡くなっています)。とは言っても、同じ年に生まれたかの「大指揮者」とはまるでかけ離れた質素な扱い、記念に何百枚ものCDが再発されるなどということはあり得ません。それでもこんな珍しい録音が日の目を見ることになるのですから、ありがたいものです。
アンチェルの演奏するモーツァルトの「レクイエム」としては、今回初めて公式にリリースされたことになるこのCDには、スイス・ロマンド放送局によって1966年9月14日にスイスのモントルー音楽祭で録音された放送音源が収録されています。録音会場は記載されてはいませんが、残響時間がかなり長いことから、コンサートホールではなく教会のようなところで録音されたのではないかというような気がします。アンチェルにしては珍しいステレオ録音は、そんな会場の空間の気配まで、見事にとらえていました。オーケストラはちょっと少なめの弦楽器、それに対して合唱はかなり大人数であることも分かります。ソリストたちの声も、くっきりとらえられていますし、もちろん生のコンサートならではのノイズも、恐ろしくリアルに収録されています。
ここでのオーケストラ、プラハ・フィルは、モーツァルトが指定した木管楽器であるバセットホルンではなく、おそらくクラリネットを使っているのではないでしょうか。しかも、そのクラリネットは、当時のチェコの演奏家のお家芸であった、たっぷりビブラートをかける奏法によって演奏されています。これは、今聴いてみるとかなり異様な感じを受けるのではないでしょうか。バセットホルンとファゴットの醸し出す木管楽器の響きは、本来ならばしっとりと落ち着いた雰囲気を与えてくれるものなのですが、ここでのビブラート丸出しのクラリネットが入ったアンサンブルは、まるでジャズのビッグ・バンドでのサックス・セクションのような締まりのない(というか、下品な)ものになってしまっています。言ってみればナイトクラブ風のレクイエム、それはそれでなかなか得難いサウンドではありますが。
しかし、そんな場違いな響きに彩られているにもかかわらず、ここでアンチェルが作り出している音楽には、一本芯の通った毅然としたものが感じられます。それは、一点一画もおろそかにしない彼の生真面目な一面を反映したものなのでしょう。その立役者が、ここで歌っているチェコ合唱団という団体です。正直、ソプラノ・パートの薄っぺらな歌い方はかなり悲惨なものがありますが、それを補ってあまりあるこの曲に対する真摯な取り組みには、強く惹き付けられるものがあります。アンチェルの意向を受けてのことでしょう、どんな細かいところもおろそかにせずにきちんと歌い上げている姿勢は立派です。
ソリストたちも、そんな熱心な合唱に呼応するかのように、全力を出し切ったいさぎよい歌い方が魅力を放っています。中でもソプラノのギーベルの密度の高さと、アルトのソウクポヴァー(なんとも懐かしい名前!)の深みあふれる音色は格別です。「Tuba mirum」では、ちょっと情けないトロンボーン・ソロなどは置き去りにして、確固たる歌を始めるバスのレーフスも立派な声、それを受けるテノールのイェルデンも、素直な声が素敵です。
ライブならではの、アンチェルの燃え方にも、ちょっと驚かされます。ショッキングなまでのゲネラル・パウゼや、陶酔感なしには起こりえない長~いフェルマータなどは、まさに同じ年生まれの「大指揮者」を彷彿とさせるものでした。このCDには「レクイエム」1曲しか入っていませんから余白は充分、演奏終了後の拍手やどよめきもほとんどノーカットで聴くことが出来ます。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2008-09-15 20:46 | 合唱 | Comments(0)