おやぢの部屋2
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P.D.Q.BACH/The Jekyll & Hyde Tour
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Prof. Peter Schikekle
Michèle Eaton(Sop)
David Düsing(Ten)
Amadillo Quartet
TELARC/CD-80666



なんとも迂闊な話ですが、このレーベルでのピーター・シックリーによる「P・D・Qバッハ」プロジェクトというものは、1995年の「The Short-Tempered Clavier」というアルバムで終了してしまっていたのだと思いこんでいました。ですから、そのスピン・オフである「ピーター(いや、スニーキー・ピート)と狼」(1993がリイシューになったとき、勇んで紹介したのでした。
ところが、なんと今年に入ってから「新作」が発表されていたではありませんか。CDの新譜については入念なチェックを怠らないつもりでいたのに、こんな重大なものを見落としてしまっていたなんて。慌てて注文、発売からはちょっと日が経ってしまいましたが、12年ぶりのニューアルバムを紹介できる運びとなりました。
「ジキルとハイド」というタイトル、そして、2人の人物が写った意味ありげなジャケ写からは、その2人の人物、ヒラヒラのドレスに鬘をかぶったP・D・Qバッハ氏と、コーデュロイのジャケットを着たピーター・シックリー氏とが実は同じ人物であることが暗示されているようです。にもかかわらず、シックリーのライナーノーツでは、この2人を「PS」と「PDQ」という数式に置き換えて、「PSPDQ」という仮定を立てると、いつの間にか「PSPDQ」になってしまうという「証明」が大まじめに論じられているのです。そんな、ばかばかしい議論を真剣にやっているという、いつもながらのシックリーの態度には、いつに変わらないオバカさが満載のようです。
このアルバムは、ホールで行われた「コンサート」のライブ録音です。そもそも40年以上前に始まったこのプロジェクトの最初のものがやはりライブ録音でしたから、まさに原点回帰ということになるのでしょうか。ですから、ここではお客さんを前にしてのシックリーの「前説」をきちんと味わうという、至福の時を味わうことになります。いや、正確にはそれに対するそのお客さんのリアクションの面白さを味わう、でしょうか。次から次へと繰り出すしょうもない駄洒落(そっ、おやぢギャグ)の嵐に、見事にハマっているお客さんの笑い声を聴くだけで、幸せな気持ちにはなれないでしょうか。その名も「Four Next-To-Last Songs」という、シュトラウスの「Four Last Songs」をもじったタイトルの曲は、実はシューベルトのパロディ。そこでの前説で、「シューベルトはゲーテの詩に曲を付けましたが、ワーグナーはゲーテが嫌いでした。そこで彼は『ゲーテの黄昏』というオペラを書いたのです」って言われても何のことだか分からないでしょうが、「Goethe」と「Götterdämmerung」をくっつけたという、くっだらない「おやぢ」なのですよ。
ところが、シックリー自身のピアノ伴奏で、その曲が始まると、それを歌っているテノール歌手には、思わずのけぞってしまいます。冗談ではなく、とんでもない音程、殆ど「音痴」ではありませんか。これは別にそういう歌い方を狙っていたというわけではなく、単にその人が「ヘタ」だというだけのこと、こういうものは、くそまじめに「正しく」歌わなければ決して本当の笑いは生まれてこないというのに、これはなんという醜態なのでしょう。会場のお客さんはそれでも雰囲気にのまれて笑いこけていますが、それを音だけで冷静に聴かされるものにとっては、笑うどころではありません。
そんなものを最初に聴いてしまったせいでしょうか、このアルバムには、今までのもののように素直に楽しめることがありません。その次の「弦楽四重奏曲」も、いまいちギャグが決まりません。さらに後半は殆どシックリー自身の弾き語り、なんだか勝手に一人で盛り上がっているような気さえしてきます。
せっかくの新譜だというのに、心から楽しめなかったのがとても残念です。もしかしたら、もはや彼とは同じ価値観を共有出来ないようになってしまっていたのでしょうか。メロンパンは嫌いだとか(それは「菓子パン」)。
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by jurassic_oyaji | 2008-09-17 19:59 | 室内楽 | Comments(0)