おやぢの部屋2
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RUTTER/Distant Land
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Peter Rostal, Paul Schaefer(Pf)
John Rutter/
The Royal Philharmonic Orchestra
DECCA/B0001821-02



前回のコンピの中にあった「ビートルズ・コンチェルト」を、編曲者のラッター自身がカバーした演奏が入っているCDです。5年ぐらい前にリリースされたものですが、こんな「珍品」らったあら(だったら)取り上げてもかまわないでしょう。
合唱曲の作曲者、指揮者として知られているジョン・ラッター、オーケストラの入った曲でも、メインはやはり合唱でした。しかし、このアルバムは、合唱はおろか声楽のソロさえ一切登場しないというユニークなもの、おそらく彼のアルバムとしては唯一のインストものではないでしょうか。
しかし、やはり彼の本領は合唱の分野ですから、ここに収録されている5つの曲のうちの3曲までが、もともとは合唱曲に由来するものだ、というのは、ある意味当然のことでしょう。つまり、合唱作品をオーケストラ用に編曲したものを数曲集めて組曲のような形に仕上げた、というものです。彼の合唱音楽に親しんでいる人であれば、それらは良く聞き慣れたものですから、たとえ歌詞がなくとも楽しめるもの、もちろん、彼のキャッチーなメロディと、ハーモニーのセンスは、初めて聴いたとしても、それだけで十分な魅力を伝えてくれることでしょう。それに加えて、彼のオーケストレーションの巧みなこと。なにも特別なことはやっていないのに、それはメロディの美しさを最大限に引き出しています。少し甘めの録音も手伝って、極上のヒーリング・ミュージックが出来上がりました。
後半の2曲は、最初からインスト曲として作られたものです。「古代組曲Suite Antique」という曲は、バッハの「ブランデンブルク協奏曲第5番」と一緒に演奏するために、という委嘱を受けて作られました。つまり、バッハの曲と同じ編成で、というリクエストだったのでしょう。なぜか、バッハにはあったヴァイオリン・ソロが削られて、フルートとチェンバロのソロに弦楽合奏という編成になっています。というより、これは殆どフルート・ソロのための作品のように聞こえます。ライナーの作曲家の言葉によれば、バッハ時代の音楽と、現代のジャズっぽい音楽の両面を併せ持つものだということです。確かに、6つの曲から成るこの組曲には、3曲目の「アリア」のように、いかにもバロックのパロディ(というか、アルビノーニの「アダージョ」そのもの)から、変拍子を駆使した最後の「ロンド」まで、多様な音楽形態の模倣が満載です。2曲目の「オスティナート」は、ラテン・リズムの「ウアパンゴ」、つまり、バーンスタインの「アメリカ」で使われているヘミオレの交錯するダンサブルなナンバーですし、4曲目の「ワルツ」は、まさにジャズ・ワルツそのものです。フルートを吹いているのはロイヤル・フィルの首席奏者アンドルー・ニコルソン、その「ワルツ」でふんだんに盛り込まれているアドリブ・ソロ(記譜してあるのでしょうが)では、まるで水を得た魚のような軽やかなプレイを披露してくれています。
そして、最後が「ビートルズ・コンチェルト」です。やはりライナーでは、作曲(編曲)者がこの曲の成り立ちを述べてくれていますが、オファーがあったときには「最も彼らしくない」仕事のように思われたということです。しかも、第1楽章に使われているうちの3曲は、もともとピアノ・デュオのロスタルとシェーファーが作っていた編曲をそのまま使っていたのだそうです。「今だから言える」ということなのでしょう。しかし、この曲の場合、オーケストラを統率するという面でのラッターのスキルには、ちょっと問題があることも露呈されてしまっています。それまでのヒーリングっぽい音作りもそのままのため、EMIのロイヤル・リヴァプール・フィルの演奏に比べるといかにもユルめ、最初にあちらを聴いておいて本当に良かったことが痛感されます。
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by jurassic_oyaji | 2008-09-25 23:18 | オーケストラ | Comments(0)