おやぢの部屋2
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竹内まりや
ワーナーミュージック・ジャパン
/WPCL 10611/4


1978年にデビューした竹内まりやは、今年で「芸能生活30周年」を迎えることになりまりや。そういう節目にリリースされたのが、この「コンプリート・ベストアルバム」です。何が「コンプリート」なのかというと、これは彼女がデビューしてから今までの30年の間にリリースしたすべての作品(「楽曲」とか言ういかにもな業界用語は絶対使いたくありません)の中から選んだものを集めたアルバムなのです。そんなことは別に特別なことではないだろう、と思うかもしれませんが、実はそうではないのがこの「業界」なのですよ。今でこそ、自分が録音した原盤(つまりマスター)をしっかり自分で管理するアーティストも出てくるようになっていますが、かつては原盤は所属レコード会社の所有物と見なされていましたから、別なレコード会社へ移籍したような場合には、もはやその原盤に関する権利は放棄しなければならなかったのです。つまり、全くアーティストのあずかり知らないところでコンピレーションなどを作られる、というような事態は日常茶飯事だったのです。最近では、CDにするためのリマスタリングなどを行いたいと思っても、アーティストには一切関与出来ないことになってしまいます。
まりやの場合は、デビューしてから3年間は「RVC」というレコード会社(現在は「BMGジャパン」と改称)の専属歌手でしたが、結婚を機に退社、1984年からは「ムーン・レコード」から再デビュー、現在に至る、という経歴ですので、「業界の掟」に従えば「RVC」時代のものを含んだベストアルバムは出せないことになります。
そのような悪しき慣例を打ち破って、あくまでアーティスト個人としてのベストを実現させたのは、彼女の現在のプロデューサーの山下達郎でした。達郎自身も、同じような移籍を経験、過去の音源をリマスタリングするのには大変な苦労をした(「敵陣に乗り込む」と言っていましたね)そうです。
いずれにしても、そのような努力のおかげで、晴れてRVC時代のまりあを、きちんとしたマスタリングのCDで聴けるようになりました。それが、今回の「コンプリート・ベストアルバム」の最大の成果なのでしょう。
その違いを確かめるために、手元にあった1984年リリースのRVCのCDと比較してみました。その違いは歴然としています。なんとも平板だった音のイメージが、くっきり際だって、それぞれのパートの存在感をしっかり主張しているものに変わっているのが、はっきり分かりました。ただ、逆にそんな明晰さが仇になって、昔の録音の欠点までさらけ出しているようなものもありました。実は今回最も楽しみにしていたのが「September」でした。前のCDだと、EPOが参加しているコーラスが非常に固く聞こえてしまっているので、それがどのぐらい改善されているかな、と思ったのです。しかし、今回のものでは、その「固さ」がさらに強調されているではありませんか。当時のアナログ録音では、ダビングを重ねるとどうしても音は劣化してしまうものでしたが、それをマスタリングで救うことは出来なかったのですね。そういえば、「涙のワンサイデッド・ラヴ」のヴォーカルの冒頭「♪初めてあなたを見たのは」の「を」の部分でのドロップアウトも、1984年盤と同じでしたね。
しかし、そんな、よりリアリティを増した音だからこそ、まりやの30年の間の変化も、つぶさに感じることが出来ることになります。デビュー当初は、ほんとにヘタだったものが、いつの間にか見違えるほど洗練されてくる課程はまさにドラマティック。そして、おそらく1987年の「駅」あたりで、さらに劇的に新境地が開かれているのが分かります。2006年の「返信」で、それはまさに究極の高みに達したのではないでしょうか。30年という長いスパンがたった3枚のCDにまとまったからこそ、そんな感慨にも浸れるのでしょう。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-01 20:02 | ポップス | Comments(0)