おやぢの部屋2
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BIZET/Carmen
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Anna Caterina Antonacci(Carmen)
Jonas Kaufmann(Don José)
Ildebrando D'arcangelo(Escamillo)
Norah Amsellem(Micaëla)
Francesca Zambello(Dir)
Antonio Pappano/
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House
DECCA/074 3312(DVD)



ビゼーの「カルメン」をDVDでご紹介するのは、これが初めてです。オペラに強い「おやぢの部屋」にしては、ちょっと意外な気がしませんか?正直、このオペラは確かに名作ではあるとは認めつつも、いつもなにかある種の違和感が伴っていました。音楽は本当に美しいものばかりなのですがねえ。
そんなものをわざわざDVDを買ってまで見てみようと思ったのは、ひとえにヨナス・カウフマンがドン・ホセ(フランス語ですから「ドン・ジョセ」というべきでしょうね)を歌っているからでした。現在最も注目に値するこのドイツ人のテノールが歌ったドン・ホセでしたら、ぜひ聴いてみようと思うじゃないですか。
この映像は、200612月にロンドンのロイヤル・オペラハウス(コヴェント・ガーデン)で行われた公演を収録したものです。タイトル・ロールのカルメンを歌っているのが、これが初めてのステージとなるアントナッチです。そして、指揮が、これもおそらくちょっと意外なパッパーノ、まあ、カウフマンを聴くのが目的ですから、他に誰が演奏しようが、別にどうでもいいのですが。
そんな、全体としては(もちろん、「カルメン」という作品に対しても)それほど期待はしていなかったにもかかわらず、これは充分に堪能出来るステージでした。セット自体はかなり抽象化されたものなのですが、その演出が視覚的にとても贅沢な思いをさせてもらえるものだったのです。これはなかなかのごちそうでしたよ。
第1幕では、いかにもゴミゴミとした猥雑な雰囲気を表現するためのディーテイルが見事に決まっています。子供たちですら、それぞれに汚れた格好をさせられてしっかりとした存在感がありますし、なんと言ってもたばこ工場の女工たちのむせかえるような(って、ほんとにみんなたばこをふかしていましたね)演技には圧倒されてしまいます。彼女らがあまりにも汚れきっている印象だったために、肝心のカルメンが登場しても、それほど目立たなかったぐらいです。
この場面には生きているロバまで登場していましたが、第2幕になると、エスカミーリョはなんと本物の馬に乗って登場しましたよ。明らかにおっかながっているのが分かってしまうような歌い方、ですから、歌っているダルカンジェロよりは、馬の面倒を見ている人の方に神経が行ってしまうほどハラハラさせられてしまいます。にもかかわらず、そんなステージ全体から発散されるエネルギーには圧倒されっぱなし、コーラスの太ったおばさんたちのダンスの振りなども見事に決まっていますから、ひとときも退屈さを感じることはありません。
ここではギロー版ではなく、セリフの入ったバージョンが用いられていますし、そこに次々と現れるキャッチーなナンバーの数々。その上にこれだけの充実したステージとなると、これはもうオペラではなくミュージカルなのではないか、という思いに駆られてしまいます。そう、オペラ・コミックとしての「カルメン」は、紛れもないミュージカルだったのですよ。もしかしたら、今まで「カルメン」がちょっと胡散臭いと感じられていたのは、ミュージカルであるにもかかわらず、退屈なオペラの演出に縛られていたものしか見ていなかったせいだったのではないでしょうか。このはじけたステージを見ていると、そんな考えが妙に現実味を帯びてきます。
カウフマンは、期待に違わない素晴らしさでした。なんと言っても、そのマスクが「ますく(まさか)、オペラ歌手ではないでしょう?」というほどのかっこよさ。声は言うことなし、細やかな表現は絶品ですし、フランス語のセリフもこんなにうまいなんて!
カルメンのアントナッチは、確かにこの役に必要な妖艶さは備えているものの、エラの張ったその顔立ちは、オペラならともかく、ミュージカルでは到底通用しない滑稽なものです。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-07 23:23 | オペラ | Comments(0)