おやぢの部屋2
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LUKASZEWSKI/Choral Music
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Stephen Layton/
The Choir of Trinity College, Cambridge
HYPERION/CDA67639



1968年生まれのポーランドの作曲家、パヴェウ・ウカシェフスキの合唱作品集です。普通のインターネット環境では表記出来ませんが、彼のファーストネームPawelの「l」とラストネームの「L」は、「エル」ではなく「ひげ」の付いた文字で、「エウ」と呼ばれるものです。そんな風に、ポーランド語のアルファベットは、普通のラテンアルファベットの26文字ではなく、「ひげ」が上や下に付いたものを含めて全部で32文字から成っているそうです。ただし、その中に「Q」「V」「X」は含まれてはいません。さっきの「エウ」は、英語などでは「W」が担っていた発音になるのですが、そんなわけで「V」の発音はその「W」の役目となり、日本語では「ヴ」または「フ」と表記されることになります。従って、さっきのようにこの作曲家は「パヴェウ・ウカシェフスキ」と呼ばれることになるのです。以上、超初級ポーランド語講座でした。
ポーランドの作曲家としてすぐ頭に浮かぶのは、あのペンデレツキではないでしょうか。彼の代表作「ルカ受難曲」が初演されたのが1966年なのですから、その時にはまだウカシェフスキは生まれていなかったことになります。しかし、彼の中にすでに存在していた「ポーランド現代音楽」のDNAは、そのペンデレツキ以上の輝かしい成果をもたらすことになりました。それは、ペンデレツキと同世代のポーランドの作曲家、キラールやグレツキ(「キラー」や「ゴロツキ」ではありません)などが最後にたどり着いた地平と極めて似た風景、あるいはペンデレツキその人の「落ち着いた」末路とも極めて類似性が認められるものでした。
このアルバムに収められているのは、ラテン語のテキストによる宗教的な合唱曲、いわゆる「モテット」という範疇に当てはまる無伴奏の小さな曲たちです。一聴して分かるのは、そのあふれるばかりの芳醇なハーモニーの世界です。三和音を基調としながらも、ちょっとした変化音を加えることによって生まれる煌めくような感触は、プーランクあたりから始まってメシアンあたりに集結したフランス風の音色を思い起こさせるものです。ごく希に、クラスターっぽい響きが聞こえたとしても、それはもはやかつての「ポーランド」とは異なるコンテクストの中にあるものととらえるべきなのでしょう。
そんな今の「ポーランド」、あるいはペルトやタヴナーといった「ミニマリスト」の様相に、「ソ-ド」とか「ソ-ミ」といった、4度や6度の跳躍を持つメロディの明るい開放感が加わったとき、そこにはいとも屈託のない印象が生まれます。これは、もしかしたら武満徹の合唱曲が持っているテイストとも、非常に似通った世界なのではないでしょうか。
以前、プーランクのアルバムで「ポリフォニー」と共演していたケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団の、これは音楽監督としてのレイトンを迎えたおそらく2枚目のソロアルバムです。前任者のリチャード・マーロウの時の演奏に比べると、全く別の団体のように聞こえてしまうのは、レイトンが求める異常なほどハイテンションのアプローチのせいなのでしょうか。以前はそこそこのまとまりを見せていたものですが、ここでは、そんな小さなまとまりなどかなぐり捨てて、殆ど「叫び」に近い表現まで見せているのですからね。そのあたりで、合唱団としての基本的な能力を超えてしまっているようなところも露呈されているほどの、それは過酷な要求に思えます。それがウカシェフスキの音楽に求められるものなのか、単なるレイトンの趣味なのか、ここから判断するのは困難です。
サイモン・イードンによる、低音の引き締まった録音は、とても素晴らしいものです。このみずみずしさは、合唱の録音の一つの規範になるほどのものではないでしょうか。こういうものこそ、SACDで出して欲しいと思うのですが。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-11 23:11 | 合唱 | Comments(0)