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声楽家と医学博士が贈る歌の処方箋
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原口隆一・市江雅芳著
河合楽器製作所・出版部刊
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「音楽でウェルネスを手に入れる」に続く、東北大学教授市江雅芳さんの2冊目の著作が上梓されました。前作では楽器の演奏と健康との関係を中心に述べられていましたが、今回はなんと声楽の分野に挑戦です。市江さんといえば、アマチュアオーケストラでオーボエとチェロ(!)を演奏されているという、いわばマルチ・プレーヤーとして知られていますが、「歌」にまで造詣が深かったとは。
もっとも、本書の場合は、声楽家である原口さんが、もっぱら歌うことに関しては述べられています。市江さんは、声を出す仕組みなどを医学的に解説する、という役割分担、このお二人の絶妙なコラボレーションによって、「歌う」ことが、単に楽しみにとどまらない、健康を長く保つための恰好のツールであることが、明らかにされるのです。
そんな、歌手とお医者さんが一緒に作ったちょっとユニークな発声法のガイドブック、だと思って読み始めてみると、いきなりショッキングな告白が目に入ってきます。なんと、原口さんは「失語症」にかかってしまい、歌うことはおろか話すことさえ出来なくなってしまったことがあったというそうなのです。歌うことを生業とされていた方が歌えなくなってしまうなんて、まるで生きることを否定されてしまったようなものだったのではないでしょうか。しかし、原口さんは、リハビリを経て完全に現役復帰を成し遂げました。その背景にあったものが、昔から続けていたきちんとした声楽のレッスン、つまり正しい呼吸法から始まる歌い方の原点だったというのです。「音楽をする事、とりわけ歌は確実にリハビリの大きな助けになる」ということを、まさに身をもって体験されていたのですね。
そして、まさにリハビリの専門家である市江さんが、そこに理論的な裏付けを与えてくれるわけです。ただ歌うだけではなく、体に無理のない歌い方を習得したときにこそ、それが健康につながるのだということを、解剖学的な見地も交えて非常に分かりやすく教えてくれています。市江さん自身、オーボエを吹いた時の無理がたたって体が不調を訴えたこともあっただけに、それは説得力があります。
さらに、市江さんの場合は、前作でも述べられていた音楽を続けるにあたって最も重要なこともここで強調されています。それは、決して「音が苦」にならないような姿勢です。例えば、合唱団に入るときも、決して歌うことが苦しみに変わることのない、しかし適度のストレスは味わえる(その「ストレス」が上達につながります)ようなところを選ぶようにとおっしゃっています。
楽器も歌も、音楽を楽しみ、かつそれを健康に結びつけるためには何をしなければいけないのか、そんな基本的な導きを、この本からは得られることでしょう。
後半はいわば実践編となっています。楽譜を見て付属のCDを聴きながら、まずは発声練習(「発生練習」はちょっとアブないですが」)、そして実際に歌を歌ってみましょう。その歌の中には日本語だけではなく、ドイツ語、イタリア語、そしてフランス語の歌詞のものまで含まれています。ちょっと取っつきにくいそんな外国語の歌でも、ここで述べられている発音のちょっとした「コツ」をマスターしさえすれば、楽しく歌うことが出来るようになるのではないでしょうか。CDで歌われている「模範歌唱」では、音域もそんなに高くなってはいないので、一緒に合わせて歌うことも出来るでしょう。
ただ、せっかくCDを付けたのですから、ここに楽譜が載っている曲が全部録音されていればな、とは思います。それと、これもせっかく、ですが、ピアノ伴奏だけのカラオケも入っていれば、より実用性が増していたのではないでしょうか。
もっとも、そこまですると本体価格2,800円では済まなくなるかもしれませんがね。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-13 20:06 | 書籍 | Comments(0)