おやぢの部屋2
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WECKMANN/Orgelwerke
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Joseph Kelemen(Org)
OEHMS/OC 627(hybrid SACD)



バッハよりも一時代前の北ドイツの作曲家、マティアス・ヴェックマンのオルガン作品集です。実は、かなり以前のことになりますがARCHIVから出ていた「北ドイツのオルガン音楽の巨匠」みたいなタイトルのLPを聴いたときに、そこで初めてバッハ以前の作曲家のオルガン曲と出会い、大きな衝撃を受けたことがありました(ビックリマン)。メインはブクステフーデだったのですが、その中にあったヴェックマンの名前も、その作品から広がってきた、バッハとは全く異なるファンタジーとともに忘れられないものとなりました。
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ヴェックマンは、ドレスデンでハインリッヒ・シュッツの指揮する聖歌隊に参加、シュッツの教えを受けた後、ヤーコブ・プレトリウスのもとでオルガンを学び、1655年から、息を引き取る1674年までハンブルクの聖ヤコブ教会のオルガニストを務めた人です。
ここでハンガリーのオルガニスト、ヨゼフ・ケレメンによって演奏されているのが、まさにその聖ヤコブ教会のオルガンです。1693年に名工アルプ・シュニットガーによって造られたものですが、それ以前にもこの教会にはオルガンは設置されていました。シュニットガーは、そのうちのいくつかのパイプ(最も古いものは16世紀後半のもの)を、そのまま使っています。ですから、ヴェックマンその人が実際に音を出したパイプも、残っているのでしょうね。そして、このオルガンの300周年を記念して1993年にユルゲン・アーレントによって修復が行われた際に造られたパイプもあるというのですから、この中には400年以上に渡るオルガン・ビルダーの仕事が息づいていることになります。
とても親切なことに、このブックレットでは、ストップごとにそのパイプが誰によって造られたものであるのかが明記されています。さらに、各々の曲で使われているストップが小節単位で記載されています。従って、今流れているコラールの旋律を奏でているのは、いつ造られたパイプなのか、などというのが分かるようになっています。そこで聞こえてくるのは、なんとも柔らかく暖かい音、新しく造られたパイプも、400年前のパイプとなんの違和感もなく馴染んでいるのが良く分かります。
この録音では、そんなヒストリカル・オルガンの繊細なパイプの音色が、その肌触りまでも含めてしっかりとらえられています。さらに、これは4段の手鍵盤とペダルという大規模な楽器、その手鍵盤につながっている4つの「ヴェルク」はメインの「ハウプトヴェルク」の中間と上部にそれぞれ「ブルーストポジティフ(ブルーストヴェルク)」と「オーバーポジティフ(オーバーヴェルク)」、そして、演奏者の背後、つまりバルコニーから突き出た形での「リュックポジティフ」から成っているのですが、驚いたことに、この録音には、そんな「ヴェルク」の位置関係までもが、はっきり聞き分けられるほどの音場感がありました。リュックポジティフなどは一段手前から音が出て来ているのが感じられるほどの立体感です。これぞ、SACD。
そんな素晴らしい楽器の素晴らしい録音、そこからは昔聴いたヴェックマンのイメージが鮮やかに蘇ってくるのを感じることが出来ました。バッハのような厳格な音楽ではない、もっと色彩感に富んだイマジネーション豊かな世界が、そこにはあったのです。このアルバムにはコラールを節ごとに別の変奏で聴かせる、というコラール変奏曲が多く収録されていますが、その中でも「Es ist das Heil uns kommen her」という7節から成る曲は聴き応えがあります。1節目では重厚な音で始まったものが、第2節でいきなりかわいらしい音色に変わって意表をつかれます。最も長い第6節では、シンプルなハウプトヴェルクと、刺激的な音を重ねたリュックポジティフとの対話がとてもスリリングな展開を見せていますよ。もう一つのコラール、「Gelobet seist du, Jesu Christ」では、最後の第4節の後半に「Cimbelstern」という「チリンチリン」という音の出る仕掛けまで使っていますしね。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-15 20:14 | オルガン | Comments(0)