おやぢの部屋2
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BRUCKNER/F-moll-Messe
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Ingela Bohlin(Sop), Ingeborg Danz(Alt)
Hans-Jörg Mammel(Ten), Alfred Reiter(Bar)
Philippe Herreweghe/
RIAS Kammerchor
Orchestre des Champs-Élysées
HARMONIA MUNDI/HMC 901976



もうだいぶ経つのでしょうが、このレーベルのマークがいつの間にか変わっていましたね。「貝殻」をモチーフにしたデザインは同じですが、トリミングされているので元を知らなければいったい何なのか分からないようなものになっています。より抽象化が進んだ、ということなのでしょう。もちろん、これはこのレーベルの創立50周年という節目での改革であることは、言うまでもありません。同じルーツを持つ兄弟レーベルDHMは、BMG(いや、SONYと言うべきでしょうか)の傘下に入ってカタログの投げ売りをされるようになってしまいましたが、こちらはインディーズとして、これからも堅実な歩みを続けていくことでしょう。
ブルックナーの交響曲第4番と第7番の、世界で初めてオリジナル楽器による録音を行ってくれた、このレーベルの看板指揮者ヘレヴェッヘとシャンゼリゼ管弦楽団は、今回はヘ短調、つまり3番目であり最後(いえ、カラヤンの奥さんの話ではありません)のミサ曲を録音してくれました。ただ、合唱団が彼の手兵のコレギウム・ヴォカーレなどではなく、ベルリンのRIAS室内合唱団となってりあす。この合唱団、最近指揮者がダニエル・ロイスから、ハンス・クリストフ・ラーデマンに代わったそうなのですが、ここには合唱指揮者としてのクレジットは何もないので、ヘレヴェッヘがこの合唱団を指揮した、ということなのでしょうね。録音も、ベルリンのフィルハーモニーで行われています。
この前に作られた「2番」のミサ曲は、管楽器だけのバックということでなにか落ち着きのないサウンドでしたが、これはもちろん正規のオーケストラですから、ブルックナー特有の厚ぼったい響きを持ったものです。ヘレヴェッヘは、交響曲と同様、あるところではそれをとても柔らかいものに仕上げようとしています。そして、客演している合唱も彼の意に添ったとことん柔らかい響きを目指しています。ただ、そんな美しい瞬間は、この曲の場合はあまり長く続くことはありません。「Credo」の途中、イエス・キリストが十字架にかけられるあたりは金管楽器がとろけるような甘~い響きを作った上に、合唱がほんとに柔らかく漂っているのですが、3日後に復活した途端、オーケストラは派手に炸裂することになるのです。なにしろ、そんな具合でいたるところあのくどくしつこいブルックナー節が全開なのですから、オーケストラがそんな同じ音型の飽くなき攻撃をトゥッティで繰り広げている間は、敬虔な宗教心にはちょっとお休みを頂いていてもらわなければなりません。
その分、「Benedictus」あたりでは、本当に静かで美しいたたずまいに1曲丸ごと浸っていられます。まるでモーツァルトの「Ave verum corpus」を思わせるような柔らかい弦楽器のイントロに続いて、ソリストが歌い出します。最初に歌い出すアルトのダンツの深い響きが、それに続く他のソリストにも受け継がれ、しっとりとしたシーンが出来上がると、そこに入ってくるのがほんとにピュアな合唱、これで、まるで天上のような世界が完成します。この曲はブルックナーの交響曲の緩徐楽章のテイストをあちこちに持っているものですが、あのような大げさな盛り上がりを見せることは決してなく、ひたすら平静のまま流れていきます。最後のあたりで聞こえてくるのは、もっと作為のない平易なメロディ、そこからはまさにモーツァルトの持っていた雰囲気さえも感じ取ることが出来るはずです。
もしかしたら、ブルックナーの本心としてはミサ曲全体をこんなしっとりとした形にまとめたかったのに、交響曲作家としての体面がそれを許さなかったのでは、そんな楽しい想像さえも駆り立てられるのが、このヘレヴェッヘの演奏でした。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-19 20:56 | 合唱 | Comments(0)