おやぢの部屋2
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ALFVÉN/Symphonies 1-5 etc.
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Neeme Järvi/
Royal Stockholm Philharmonic Orchestra
BRILLIANT/8974



この前のニルソンの自伝の中には、彼女がアルヴェーンの交響曲第4番を演奏したときの模様が書いてありました。ニルソンと同じスウェーデン生まれのフーゴー・アルヴェーンは、「夏至祭」というNHKの「きょうの料理」のテーマ曲(@富田勲)に非常によく似ている曲だけが知られている作曲家ですが、交響曲も5曲ほど作っていたのですね。その中で、この「第4番」は、1楽章形式の少し変わった構成を持っています。それよりも変わっているのはその「テーマ」。それがニルソンによって語られているのです。
それによると、「海辺の岩礁より」というタイトルのこの交響曲は、作曲家の若い頃の体験がモチーフになっているのだそうです。彼は当時海辺に住んでいましたが、その岩礁から見える離れ島には美しい人妻がいて、彼とは秘密の恋人の間柄だったのです。人妻は、夫が出かけていなくなると、窓に灯りをともして「今なら大丈夫よ」というサインを送ります。それを見たアルヴェーンは矢も楯もたまらず真っ暗な海に飛び込んで、愛人の許へと泳いで行くのです。そんな情景を描写したのが、この交響曲だというのですね。いやあ、なんという破廉恥なテーマなのでしょう。これはベルリオーズの「幻想交響曲」も真っ青の、言ってみれば「不倫交響曲」ではありませんか。この曲には、テノールとソプラノのソリストが加わっていて、ヴォカリーズでそれぞれの男女の思いの丈を歌い上げているんですって。ニルソンがそれを歌ったときには、アルヴェーン自身が指揮をしていたそうです。こういうものをご本人が堂々と聴衆の前で披露するという根性は、まさに尊敬に値します。
そんな曲だったらぜひ聴いてみたいと思うじゃないですか。そこで、録音を調べてみたら、BISから交響曲と管弦楽曲を網羅した単発のCDが5枚出ていました。ただ、20年近く前のものでしたからすぐには手に入らないだろうな、と思っていたところ、なんとBRILLIANTからその5枚がまるまるボックスになって出たばかりだったではありませんか。なんという偶然、しかも5枚でも1枚分の価格ですから、迷わず購入です。
その「4番」は、確かにかなりエロい曲でした。まるでベートーヴェン(それは「エロいか?」)。もちろん、そんな背景を知りながら聴いていたからなのでしょうが、何よりもソリストたちの甘ったるい歌い方がたまりません。特に、ここで歌っているテノールのアンスホーという人が、殆ど女声にしか聞こえないようなへなちょこな声なので、いかにも「いけない」印象が強まります。この二人、最初は両端で歌っているのに、だんだん真ん中に寄ってくるんですよね。
しかし、ここで聴かせてくれるアルヴェーンのオーケストラの表現力の多彩さには、驚かされます。そこからは、荒れ狂う海や、恋人同士の熱い思いが、恥ずかしいほどストレートに伝わって来るのですからね。彼は、オーケストラを使って情景描写を行うスキルに関しては、まさに卓越したものを持っていることを、強く印象づけてくれました。
せっかくだからと、他の曲も一通り聴いてみましたが、そんなワクワクするようなオーケストレーションは、いたるところで味わうことが出来ました。5枚目に入っている「山の王」という組曲がその白眉でしょうか。1曲目の「呪文」でのおどろおどろしいテーマには、思わずのけぞってしまったほどです。カップリングが「交響曲第5番」なのですが、4楽章形式でいかにもかっちりしたたたずまいなのに、聴いた感じはその組曲とあまり変わりません。第3楽章などには、どうやらさっきの「呪文」のテーマが使われているようで、これもとことん楽しめる曲なのでした。
さっきのニルソンの自伝には、アルヴェーンはただのエロおやじだったというオチがあります。それを軽く受け流して、ニルソンは「彼は、女性宛の手紙のオーケストレーションにおいても巨匠だった」ですって。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-21 19:48 | オーケストラ | Comments(0)