おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
2009年 07月 01日 ( 1 )
GRAUN/Große Passion
c0039487_724328.jpg
Veronika Winter(Sop), Hilke Andersen(MS)
Markus Schäfer(Ten), Ekkehard Abele(Bas)
Hermann Max/
Rheinische Kantorei
Das Kleine Konzert
CPO/777 452-2



1704年頃に生まれて1759年に亡くなったカール・ハインリヒ・グラウンは、あのフリードリヒ大王の宮廷に兄のヨハン・ゴットリープとともに仕えていました。もちろん作曲家として、道化ではありません(それは「クラウン」)。グラウンが大王のために作ったフルートのためのソナタや協奏曲は、今でもフルーティストのレパートリーとなっています。
しかし、彼の作曲家としてのメインのフィールドは、イタリア・オペラ(もちろん、「オペラ・セリア」)でした。彼は、同じくドイツ人でありながら多くの「イタリア・オペラ」を作ったあのアドルフ・ハッセと並び称されるほどのオペラ作曲家としての名声を誇っていたのです。そして、そのオペラの語法を縦横に駆使した「受難曲」を、5曲ほど作っています。
c0039487_727223.jpg

今回のアイテムは、その中で最も有名でCDも数種類ある(例えばクイケン盤↑HYPERION/CDA67446)「イエスの死」ではなく、「その他」の4曲のうちの、歌い出しが「Kommt her und schaut(こちらへ来て、よく見て下さい)」という「大受難曲」です。ちなみに、2006年にはクリストフ・ヘンツェルによって「グラウン兄弟」の主題付き作品目録「Graun-Werkeverzeichnis(Graun WV):Verzeichnis
der Werke der Brüder Johann Gottlirb und Carl Heinrich Graun/Ortus
」が出版されました。ここでは、兄の作品は「A」、弟の作品は「B」、いずれとも決めがたい(筆跡がよく似ているそうです)作品は「C」とカテゴライズされています(完全な偽作は「D」)が、この作品には「B:VII:5」という品番が与えられています。
レシタティーヴォ、アリア、コラールなど全部で67曲、演奏時間は2時間を超える大作、しかもテーマは「受難」ですから、聞き終えるにはさぞや忍耐が必要なのでは、という先入観は、しかし、ほんの数分で終わってしまうその小さな曲たちを聴き進んでいくうちに、全く消え去っていました。それらは、なんと愛らしい、聴くものの心を開いてくれる魅力を持ったものなのでしょう。ここでは合唱の出番はあまり多くなく、ソリストによるきら星のようなアリアがメインを占めているのですが、そのどれを聴いても惹きつけられるものがあるのですよ。何よりも、イントロからしてキャッチー、ファゴット2本によるメロディアスな前奏などは、この楽器がいよいよ低音専属から解放される時代を感じさせてくれます。かと思うと、ちょっと前の、まるでバッハのような細かい音符満載のヴァイオリンのオブリガートも健在ですし。そんなオブリガートも、歌手たちと対位法的に競い合うのではなく、同時に「ハモり」になっているあたりが、次の時代の様式を確かに感じさせてくれます。歌詞の内容を暗示しているのでしょうか、ヴァイオリンによるトレモロなどで、まず「震え上がる」感情を先取りさせる、というのは、ちょっと古い様式でしたっけ?
でも、オケにはフルートもオーボエも3本ずつ入っているのに、活躍しているのはもっぱらオーボエだけ、フルートといえばほとんどコラールのユニゾンしか仕事がなく、唯一アリアで登場するのも単純な上向アルペジオだけ、というのはもったいないような気がしますが。
ソロを歌っている4人が、本当に素敵です。伸びやかこの上ないヴィンター、深い響きが魅力的なアンデルセン、ちょっと茶目っ気もあるシェーファー、そして、つややかな声のアベレと、それぞれの持ち味を発揮している上に、デュエットなどのアンサンブルも見事です。
最後の方に「マタイ」でお馴染みの受難のコラールが出てきますが、その和声がバッハの数種類のものと又さらに異なっているのも聴きどころでしょう。それを歌っている合唱が、ソリストほどの完成度を示していないのと、CDのトラック表示にミスがある(2枚目の1曲目とされているコラールは、1枚目の最後に入っていました)あたりが、ほんの些細な欠点でしょうか。メーカーのインフォでのバスの人の名前の「エイブル」という誤記などは、さらに小さな疵にすぎません。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück
[PR]
by jurassic_oyaji | 2009-07-01 07:26 | 合唱 | Comments(0)