おやぢの部屋2
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2009年 07月 25日 ( 1 )
MOZART/Flute Concerto No.2 etc.
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André Pepin(Fl)
Ernest Ansermet/
L'Orchestre de la Suisse Romande
DECCA/480 0379



オーストラリアのUNIVERSALから、「エロクェンス」の2枚組シリーズとしてアンセルメの録音が大量にリリースされています。肩こりにはこれ(それは「アンメルツ」)。そんな中で、これはアンセルメにしては非常に珍しいモーツァルト(1曲だけレオポルド・モーツァルト)を集めたものです。殆ど初CD化というレアな音源には、つい手を伸ばしたくなるような魔力が潜んでいました。
最初は、1947年に録音された「交響曲第38番」、当然モノラルです。アンセルメのモーツァルト自体、聴くのは初めてのことでしたが、この時代にありがちな情緒たっぷりなスタイルではなく、もっとサラッとしたある意味スマートなものだったのは、ちょっと意外な気がします。フィナーレなどはかなり速いテンポでアグレッシブに迫ります。逆に、そんな即物的なところが、モーツァルトに関してはあまり魅力的ではないと、当時は判断されて録音も多くはなかったのかもしれませんね。
次がお目当てのニ長調のフルート協奏曲です。これは1957年のステレオ録音です。DECCAとしては最も初期のステレオ録音のはず、ブックレットにオリジナル・アルバムのジャケット写真が載っていますが、まだマーク自体にはステレオをあらわす「ffss」ではなく、モノラル時代の「ffrr」というロゴが残っていて、別のところに「STEREOPHONIC」のロゴが見られるというのが、過渡期を思わせるものです。録音場所も、彼らのそれからの多くの録音で使われることになるヴィクトリア・ホールになっています。ただ、後のスイス・ロマンド・サウンドとはちょっと違った、いかにも高域を強調した安っぽい音なのは、やはり過渡期という感じ。
フルートのソリストは、このオーケストラの首席奏者、1909年生まれのアンドレ・ペパンです。そんな、ちょっと薄っぺらな録音によって、彼のいかにもフランス風の音がさらに軽やかなものに聞こえます。ただ、音楽的にはちょっと余裕のない技巧のせいでしょうか、モーツァルトの持つ軽やかさにはほど遠いものになってしまっています。カデンツァは、この時代の定番ドンジョンが使われています。
1枚目の最後は、1948年の録音で、オーケストラがスイス・ロマンドではなくパリ音楽院管弦楽団という、これも珍しいものです。ジャニーヌ・ミショーというソプラノのソロで、「エクスルターテ・ユビラーテ」全曲。なかなか素直で伸びのある声だと思っていたら、最後の「アレルヤ」でとんでもないコロラトゥーラを披露しているのには、笑うしかありません。
2枚目に入っているのは、13の管楽器のためのセレナーデ「グラン・パルティータ」、これは1955年の録音で、まだモノラルです。しかし、音の「深み」という点では、さっきのフルート協奏曲よりもはるかに充実したものが感じられます。それぞれの楽器がとても生々しい音色で、奏者の息づかいまでもはっきり聴き取ることが出来る素晴らしい録音です。ただ、演奏は後半になるにしたがってどんどん雑になっていくのは困ったものです。それは、明らかにアンセルメが過剰に煽り立てているために、奏者がそれについて行けなくなってしまった結果なのでしょう。最後の曲などは、アンサンブルが完全に破綻しています。
最後に収録されているのが、1968年録音の、レオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲。このあたりになって、やっと聴き慣れたスイス・ロマンド・サウンドが現れてきます。その柔らかな弦楽器の響きはとことん魅力的で、うっとりするようなゴージャスさをたたえています。
そんな素晴らしい録音に慣らされていた人たちが、初めて来日したこのオーケストラの生の音を聴いてがっかりしたことなどは、もはやすっかり忘れ去られている時代だからこそ、こんな珍しい音源が歓迎されるのかもしれません。同時に、CD化されなかったのにはそれなりの理由があったことにも納得させられるのです。

CD Artwork © Universal Music Australia Pty. Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-07-25 23:07 | オーケストラ | Comments(0)