おやぢの部屋2
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2013年 03月 20日 ( 1 )
HOLTEN/Venus' Wheel
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Bo Holten/
Flemish Radio Choir
DACAPO/8.226062




1948年生まれのデンマークの作曲家、指揮者のボー・ホルテンは、音楽大学では音楽学とファゴットを学んでいて、現在の仕事である作曲や指揮法は独学で勉強したのだそうです。そもそも音楽という「芸事」自体が、学校教育とは無縁なものなのですから、そういう道も大いにあり得ます。日本の作曲家の中では間違いなくトップクラスにランクされている武満徹だって、作曲に関してはアカデミズムとは全く無縁なのですからね。
ホルテンは、今までに合唱指揮者としては多くの合唱団と関わってきました。まず1979年には、このDACAPOレーベルでもおなじみの卓越した合唱団「アルス・ノヴァ・コペンハーゲン」を自ら創設して、その常任指揮者となります。そのポストを1996年まで務めた後、その年に今度は「ムジカ・フィクタ」という合唱団を創設します。
同時に、世界中の合唱団からの要請にこたえて、1990年から2005年まではイギリスのBBCシンガーズの首席客演指揮者、2008年から2011年まではこのCDで共演しているフランダース放送合唱団の首席指揮者を務めていました。
作曲家としては、古い音楽から新しい音楽まで吸収したうえで、独自の親しみやすいスタイルで曲を作り上げているのでしょう。日本の作曲家だと、信長貴富みたいな感じでしょうか。
このアルバムでは、ほとんどが世界初録音となるホルテンの合唱曲が自作自演で紹介されています。最初の、ゲーテのテキストによる「ローマ悲歌」も初録音、1曲目はチェロの低音に乗って緊張感あふれるハーモニーが古代ローマへの思いを語ります。2曲目はメンバーによるバリトン・ソロが、ローマで出会った女性の肉体をたたえる、ちょっとエロティックな歌を歌います。ちなみに、このタイトルはゲーテ自身のローマ旅行に関連した著作のものですが、代理店(NAXOS)の解説では「ロマンティックなエレジー」と、相変わらず間抜けな「邦題」が付けられています。
クリトゥス・ゴットヴァルトの編曲で、合唱界ではすっかり有名になっているマーラーの「リュッケルト歌曲集」からの「私はこの世に捨てられて」を、ホルテンが編曲したものも、ここで初めて聴くことが出来ます。ゴットヴァルト版よりもあっさりとしたハーモニーの処理で、かなりイメージが変わって聴こえます。さらに、ここではバリトン・ソロが入ります。このソロの比重がかなり高くなっているので、「合唱曲」としてはあまり面白くありません。というより、ここからはゴットヴァルト版が持っていた「深み」が見事になくなっています。
Handel with Care」という、やはり初録音の曲は、タイトルがなかなか笑えます。なんせ「取り扱い注意」という意味の「Handle with Care」のおやぢギャグなのですからね。ホルテンもなかなかのおやぢ、炭火には気を付けましょう(それは「ホルモン」)。なんでも、ヘンデルの没後250年にあたる2009年に委嘱されたそうですが、この年は同時に、チャールズ・ダーウィンの生誕200年と、彼の著作「種の起源」が出版されてから150年という「ダーウィン・イヤー」だったことから、ホルテンはヘンデルとダーウィンをマッシュ・アップすることを考えました。その結果、合唱によってハーモナイズされたダーウィンのテキストに乗って、ソプラノ・ソロがヘンデルの作品たとえば「私を泣かせてください」とか「水上の音楽」などを何の脈絡もなく歌うという、痛快な作品に仕上がりました。
最後の初録音曲は、アルバムタイトルにもなっている「ヴィーナスの車輪(Rota Veneris)」です。中世の作者不詳のモテットに新たなパーツを加え、別のテキストを付けるという手法で出来上がった作品、サンドストレムがパーセルの作品を使って同じようなことをやっていましたね。
演奏は、心なしか雑な感じがします。というより、録音で破綻をきたしているところも見受けられます。このレーベルだったらもっと良い音を、SACDで聴かせてほしいものです。

CD Artwork © Dacapo Records
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by jurassic_oyaji | 2013-03-20 21:50 | 合唱 | Comments(0)