おやぢの部屋2
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2015年 09月 27日 ( 1 )
The Puccini Album
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Jonas Kaufmann(Ten)
Antonio Pappano/
Orchestra e Coro dell'Accademia Nationale
di Santa Cecilia
SONY/88875092492




カウフマンは、おそらく今のオペラ界では間違いなく最も成功したテノールなのではないでしょうか。何故に「成功」というかはさまざまなご意見があることでしょうが、まずはそのファンの多さです。なんせ、日本の音楽雑誌には「今月のヨナス・カウフマン」という連載が掲載されていたほどですからね。そして、そのような「心情的」な尺度ではなく、もっと納得できるものが、レパートリーの幅広さです。スタート時はモーツァルトあたりだったものが、見る見るうちにワーグナーまで歌うようになって、「ドイツ・オペラ」の新しい星、と思われていたものが、いつの間にかヴェルディやさらにはビゼー、マスネといったイタリアやフランス物でも成功を収めるようになってしまいました。
それだけではありません。あまりご存知ないかもしれませんが、デビュー・アルバムがR.シュトラウスの歌曲集だったように、彼はオペラだけではなくリートの世界でも大活躍しているのです。ヴェルディとワーグナーを同時に歌える人ではプラシド・ドミンゴがいましたが、彼がリートを歌うのは聴いたことがありません。カウフマンに望むのは、間違っても指揮者への道を歩もうなどとはせず、ずっとこの素晴らしい声を聴かせ続けてくれることに尽きます。
今回のニューアルバムは、2014年9月にローマでのセッションで録音されたもの、全曲プッチーニのオペラからのナンバーというとんでもないものでした。彼がデビューしたころには、こんな「オール・プッチーニ・アルバム」が出来上がるなどと予想した人などいたでしょうか。それも、プッチーニの12曲あるオペラの中から11曲が取り上げられているのですからね。唯一欠けている「修道女アンジェリカ」にしても、これが含まれる「三部作」の他の2つ、「外套」と「ジャンニ・スキッキ」はちゃんとあるのですから、こうなると「ほぼ全作」と言っても全然構いませんし。なんせ、「妖精ヴィッリ」とか「エドガール」といった、今まで耳にしたことのない初期の作品の一部が聴けるのですから、かなりマニアック。
もっとメジャーな「トスカ」のカヴァラドッシあたりは、かなり前からステージで歌っていたようですし、2013年にウィーン国立歌劇場ではそれほど有名ではない「西武の娘」のジョンソン、2014年にはロンドンのコヴェント・ガーデンで「マノン・レスコー」のデ・グリューで大評判をとったというほど、最近はプッチーニづいているようですね。「西部」と「マノン」は近々その時の映像もリリースされるようですし。
実は、今回のアルバムの中では、カウフマンだけではなく、ほかの歌手も参加してアンサンブルも披露されています。そこでソプラノのロールを担当しているのが、リトアニア出身のクリスティーネ・オポライスというおいしそうな名前の人(それは「オムライス」)なのですが、彼女とは数か月前のコヴェント・ガーデンで共演していたばかり。しかも、その時の「マノン」は本来歌うはずだったアンナ・ネトレプコのキャンセルによる代役でした。その時の指揮者、パッパーノとともに、めでたくアルバムの最初は「マノン」からの4曲で飾られています。
オポライスは他にも「ボエーム」のミミと、「トゥーランドット」のリューも歌っています。このCDで音を聴く限りでは、彼女の声は「マノン」よりこちらの方がより魅力的に思えます。
カウフマンも確かに魅力たっぷりのロドルフォやカラフを聴かせてくれていますが、彼の持ち味であるストレートで強靭な声は、プッチーニの音楽とはほんの少し融けあわないな、と感じられるのも確かです。いや、しかしこれはこれでいいんです。プッチーニで変な軟弱さに染まったりしてしまったら、彼はもうワーグナーなんか歌えなくなってしまうではありませんか。そんなことになったら、世の「ヘルデン・ファン」たちが黙ってはいませんよ。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2015-09-27 20:45 | オペラ | Comments(0)