おやぢの部屋2
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2015年 10月 13日 ( 1 )
BEETHOVEN/Symphony No.6, Overture"Egmont"
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近衛秀磨
読売日本交響楽団
NAXOS/NYCC-27293




近衛秀磨と読響が1968年に録音した音源のマスターテープから、ナクソス・ジャパンによってハイレゾ・デジタルリマスターが施されたCDの第2弾です。以前ご紹介した第1弾は2月21日の録音でしたが、今回のものはその1か月後、3月20日と21日の2日間にわたって、同じく杉並公会堂で録音されたものです。いずれもエンジニアなど、スタッフのクレジットは一切ありませんが、おそらく同じチームによって行われたものなのでしょう。
とは言っても、この2枚の音を比べてみるとだいぶ違っていることが分かります。今回の方がよりくっきりとした音のように感じられますし、テープの保存状態も、いくらか良好なようです(それでも、1ヵ所、かなり目立つ劣化のあとが確認できました)。ただ、今回気になったのがちょっと不思議なエコー成分の処理です。オーケストラの弦楽器の並び方は向かって左からファースト・ヴァイオリン、セカンド・ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、そしてチェロの奥にコントラバスという標準的なものですが、ファースト・ヴァイオリンのエコーがなぜか反対側から聴こえてくるのですね。それはエコーとは言えないほどのかなりはっきりした音なので、まるでファースト・ヴァイオリンが左右に分かれているかのように聴こえてしまいます。これに気づいてしまうと、かなり煩わしいものです。
演奏されているのは、ベートーヴェンの「田園」と「エグモント」序曲です。「田園」については、菅野冬樹氏による下ろしのライナーノーツの中で、近衛が初めてヨーロッパに行った時に体験したフランスの田園風景が、この曲の演奏に反映されているのではないか、と述べられています。それが本当なのかどうかは知る由もありませんが、確かに今回の「田園」の演奏では、前回の「運命」よりははるかに充実した指揮者とオーケストラの姿が見えてきます。特に管楽器セクションは、1ヶ月前とは見違えるようなレベルの高い演奏を聴かせてくれています。
ここでの近衛は、音楽を恣意的に捻じ曲げることはせずに、あくまで自然の流れに任せているように思えます。第1楽章のとても心地よいアンサンブルからは、まさに至福の時が体験できます。この楽章の460小節目から(9:48付近)、楽譜にはないホルンが聴こえてくるのは、「近衛版」だからなのでしょう。
第2楽章になると、この時代の指揮者にしては珍しい、とてもサラッとしたインテンポの音楽になったので、逆に少し戸惑ってしまいます。フレーズの終わりでタメを作る、といったありがちな表現は全く見られず、あくまで淡々と流れるような情景の描写に徹しているのは、少し物足りない思いもしますが、演奏の格調はとても高いものに仕上がっています。
第3楽章はちょっと重たいテンポで、あまり羽目を外さないような音楽、指定された繰り返しも行っていません。続く第4楽章ではコントラバスがかなり気合を入れて華々しく暴れまわります。そして、ピッコロの一瞬の叫びも、とても明確に録音されています。このあたりを近衛だったらかなりいじるのではないか、という予想は見事に外れ、ピッコロのパートに関してはオリジナル通りだったのも、ちょっと意外でした。バーンスタインあたりでもかなり手を加えていたはずなのに。
ですから、最後の楽章もいともまっとうな、アゴーギグではなくあくまでダイナミックスによって語ろうとするとても大きな音楽に聴こえます。「近衛版」がこの楽章で確認できたのは、49小節目(1:43付近)、木管をヴァイオリンと同じリズムにして、フレーズの終止感をはっきり出しているところでしょうか。
「エグモント」では、なにかオーケストラのアンサンブルが決まらないところが気になります。終わり近くでは金管だけが暴走していますし、「田園」ほどの完成度は見られません。
この曲の最後では、まだ残響が消えていないところで音がスッパリ切れています。このリマスタリング・エンジニアのお粗末な仕事には唖然。

CD Artwork © Naxos Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-10-13 20:32 | オーケストラ | Comments(0)