おやぢの部屋2
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2015年 10月 17日 ( 1 )
NYSTEDT - BACH/Meins Lebens Licht
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Grete Pedersen/
Nowegian Soloists' Choir
Ensemble Allegria
BIS/SACD-2184(hybrid SACD)




このレーベルから定期的にリリースされているペーデシェン指揮のノルウェー・ソリスト合唱団の2年ぶりのニューアルバムです。今回のアルバムには昨年99歳の天寿を全うしたノルウェーの作曲家で合唱指揮者のクヌット・ニューステットを悼む意味が込められており、そのニューステットの作品と、彼が大きな影響を受けたバッハの作品が演奏されています。
そもそも、ニューステットというのは、1950年にこの合唱を作った人、それ以来40年間指揮者を務め、彼はいわばこの合唱団を「自分の楽器」として、多くの合唱作品を作ることになるのです。そして、1990年にはニューステットは引退、その地位は、現在のペーデシェンが引き継ぐのですね。
およそ30人から成るこの合唱団は、もちろんその長い歴史の間には多くのメンバーが入れ替わっています。実は、前回のアルバムの時のメンバーと今回を比べてみたのですが、たった2年の間に半数以上が別の人になっていましたから、その出入りは思った以上に激しいようです。そして、今回のメンバーの写真の中に、なんだか日本人のような顔立ちの人がいたのでメンバー表を見てみたら、テナーに「ツジ・マサシ」という名前の方が見つかりました。この方は、辻政嗣さんというベルリン在住のテノール歌手。こんな風に、決してノルウェーや北欧にこだわらない人選が行なわれるようになっているのでしょう。そういえば、明らかにイギリス人のような名前の方もいましたね。
その辻さんのFacebookが見つかったので読んでみたら、普段はベルリンで活動されていて、時折ノルウェーを訪れているような感じでしたね。ですから、この団体は日本の「合唱団」のように年中一緒に行動を共にしているというのではなく、コンサートやレコーディングの時に集中的にリハーサルを行って本番を迎えるという、まさに「ソリスト」たちの集団なのでしょう。
バッハの作品では、葬送の意味を持ったモテットが2曲演奏されています。まず、BWV118の「O Jesu Christ, meins Lebens Licht」という、このアルバムのタイトルにもなっている曲です。これは1737年頃に、屋外での葬送のために作られたもので、オリジナルは伴奏に多くの金管楽器(コルネット、リトゥス、トロンボーン)が使われていて、弦楽器は入っていませんでした。「リトゥス」という珍しい楽器が使われることはそうそうありません。ここでは、それを1747年ごろに別の機会で使った時に弦楽器を加えた「第2稿」から、金管楽器を除いてオプションのオーボエとファゴットとオルガンを加えた版で演奏されています。そんな伴奏に乗って淡々と歌われるコラールと、それに絡み付く装飾的な対旋律、この合唱団は、そこから真摯で深い哀悼の思いを捧げているようです。
もう一つは、BWV227「Jesu, meine Freude」という、一番規模が大きく広く親しまれているモテットです。ここでは、合唱団はいくらか明るめの音色で、積極的に前向きの音楽を作っています。
そして、ニューステットの作品たちはほとんどが初めて聴いたものですが、それぞれの時代に作られた、いずれも聖書にテキストを求めたそれぞれに特徴的な作品が楽しめます。1995年に出版された「Be not afraid」で聴かれる軽快なオスティナートなどは、今まで抱いていた彼のイメージを少し覆すようなものでした。
そして最後に、彼の最も有名な作品「Immortal Bach」が演奏されます。バッハのBWV478「Komm, süßer Tod」というコラールをまず普通に演奏した後、各声部の時間軸を大幅に拡大して、そこで生まれるクラスターの響きの中にバッハの音楽の持つ永遠性を感じ取る、というものですが、1987年に作られたこの曲は先ほどの1990年に行われたニューステットがこの合唱団を去るイベントでも、重要な役割をもって演奏されたと言います。今回の録音では、部分的に弦楽器を重ねてこの曲が持つ広大な世界をさらに広々としたものに感じさせてくれます。最後に収束する変ホ長調の響きの、なんとピュアなことでしょう。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2015-10-17 09:06 | 合唱 | Comments(0)